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螺旋の夢路

《第一夜》

カラカラと…乾いた音が連続して響いている。
目の前が、ぼんやりと明るくなる。

光の中に、影が映る。

あぁ…これは影絵舞台か。
先程から響いている音は、この舞台を動かすカラクリの音だろう。

3人の子どもらしき影が、舞台上に映る。
どうやら3人は兄弟で、旅をしているようだ。

やがて彼らは、助けを求める小さな声に気づく。

一番優しい長男が、「気の毒に、助けてやろう」と言った。
一番賢い三男が、声の主の居場所を見つけ出した。
一番力持ちな次男が、岩を動かし、声の主を助け出した。

すると、彼らの前に、青い光が現れた。

「ありがとう、優しき子ら。お礼に、お前たちの願いを、3つだけ叶えよう」

三男が言った。「僕は、空を飛んでみたい」
それを聞いた長男が、「それじゃあ、お前が落ちても平気なように、僕は大地になろう」
と言った。
最後に残った次男は、「もしも弟が天から落ちたら、弟も兄さんも痛かろう。僕は天を支えるように、一番のーーーになろう」と言った。

青い光は、子どもたちの願いを叶えた。

けれど、すぐに三男が言い出した。
「だけど、3人バラバラじゃ寂しいや。今までずっと3人一緒だったのだもの」
次男が答えた。「大丈夫さ。僕はーーーだから、きっとーーーーーーすぐにーーー」

…どうも、カラクリの調子が悪いらしく、軋む音で途中から台詞がかき消される。
いや、これは…悲鳴か?
違うな…やはり機械の…

何だ…この音は…



泣いているのは、誰だ?

更新日:2022-11-12 19:30:57

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