• 9 / 11 ページ

ガンガーと8人の子どもたち

挿絵 400*619

ブラフマーの街を巡る河の畔に、ガンガーと8人の子どもたちが住んでいました。


8人の子どもたちは、ガンガーの本当の子どもではありません。

以前は、とある山の中に住んでいたのですが、とても元気な子どもたちでしたので、ある時、偉いお坊様の修行を騒がせてしまったのです。

お坊様の邪魔をしてしまった子どもたちは、山にいられなくなり、ガンジスの川辺で途方に暮れて泣いていました。

そこへ、ガンジス川の女神であるガンガーが通り掛りました。

ガンガーは、8人の子どもたちに、泣いている訳を尋ねました。

8人の子どもたちは、口々に訳を話しましたが、自分たちが悪い事をしてしまったせいか、上手く話せません。

けれども、ガンガーは、じっくりと、黙ってずっと話を聞いていました。

その様子が、とても優しく見えましたので、子どもたちは「この人がお母さんになってくれたら」と思いました。

すると、ガンガーは、8人の子どもたちを、自分の子どもにしよう、と言ってくれたのです。

それから、8人の子どもたちは、ガンガーの子どもになりました。



ある日、街のご主人様である神様のブラフマーは、川辺を散歩していました。

すると、8人の子どもたちが、ガンガーの周りで遊んでいるのが目に入りました。

ブラフマーは、ここのところ、いろいろな神様たちから、とても忙しいのでどうにかして欲しいと相談されていましたので、ガンガーに話し掛けました。

「どうでしょう、ガンガー。あなたの子どもたちに、神々のお手伝いをしてもらえれば、と思うのですが?」

8人の子どもたちは、とても元気で、そのお役目に相応しく見えました。

ガンガーは、少しの間、ブラフマーを見つめていましたが、「いいだろう」と答えました。

それで、3日後に、ブラフマーが子どもたちを連れに来ると約束して、別れました。



その夜、ガンガーは、ブラフマーに言われた事を、8人の子どもたちに告げました。

8人の子どもたちは、とても喜びました。

お母さんのような立派な神様のお役に立てるのを、誇らしく思ったのです。

その夜、8人の子どもたちは、ガンガーと一緒に、ぐっすり眠りました。



明くる日、ガンガーは、子どもたち1人1人に、背負子の付いた小さな行李を持たせて、お仕事に出掛けるのに必要なものを入れるように、と言いつけました。

8人の子どもたちは、それぞれに、着る物やら、大事にしている楽器やら、行李に収まるように、きちんと詰めて行きます。



そうしているところへ、ブラフマーの奥さんのサラスヴァティーがやって来ました。

サラスヴァティーは子どもたちの様子を見てから、ガンガーに言いました。

「あなたは、子どもたちを働きに出す事をご承知になったそうですね。でも、本当にそれでよろしいのですか?」

ガンガーは、黙ってサラスヴァティーを見つめました。

サラスヴァティーの言いたい事が、わからなかったのです。

仕方なく、サラスヴァティーは、もう1度、言い直しました。

「神様を手伝うと言っても、子どもたちが神様になれる訳ではないのですよ?それでも、あなたはよろしいのですね?」

ガンガーは、首を傾げて、尋ね返しました。

「それじゃあ、私が断ればいいのかい?」

サラスヴァティーは慌てて首を横に振りました。

「とんでもない!ブラフマーが決めた事ですもの、今更、変えるなどできません」

ガンガーは、改めて子どもたちを眺め、溜め息を吐きました。

子どもたちは、機嫌良く出掛ける支度をしています。

この上、どうしたらいいのでしょう?

そんなガンガーと子どもたちを見て、サラスヴァティーも溜め息を吐くと、お暇の挨拶をして、お屋敷に帰って行きました。



その夜も、8人の子どもたちは、ガンガーと一緒に、ぐっすり眠りました。



2日目の朝になり、ガンガーは、8人の子どもたちを連れて、ガンジス川に出掛けました。

そして、1人1人を丁寧に洗い、清めてやりながら、神様のところへ行ったら、お行儀良くするように言い聞かせました。

神様の言うことは、ちゃんと聞くこと。

何か失敗をしたら、恥ずかしがらずにすぐに申し上げること。

言いつけられたお仕事が終わっても、神様が良いと言うまでは、勝手に遊びに行かないこと。

もちろん、退屈しても、仲間同士で騒いではいけません。

そんなことを、それぞれに言いました。

子どもたちは、お母さんの言いつけを忘れないように、よく聞いていました。



その夜も、8人の子どもたちは、ガンガーの傍でぐっすりと眠りました。

ですが、ガンガーは何だか、寝付けずに、子どもたちを眺めていました。

更新日:2015-09-22 17:18:00

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook