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トレーニングの法則

「まーおっ!ま~~お~~~。」

「ああっ!もう、うるさいなあ!」


人が、せっかくあと一息でステージクリア。というところまできているのに。
風呂場からしつこく呼ぶ声がする。

「あああ!!!もうっ!大ちゃんのせいで、クリアしそこねたじゃんかっ!」

情けない音がして、敵キャラが憎たらしく勝利のポーズをとる。

「まったくもう、一番集中しないといけないときに、邪魔するんだから。」

一言文句でも言ってやらないと気がすまない。とぷんすか腹をたてながら、勢いくバスルームのドアを開けると、

「あっ!まお~~。ほらほら、見てみろよ~~。」

と、人のステージクリアを無駄にしておきながら、呑気に湯をちゃぷちゃぷさせて遊んでいる。
・・・反省の色なし。ってか?
人のこと、散々マイペースで呆れるとか言うけど、いい勝負だと思うよ?

・・・それを、世の中では「似たもの夫婦」って呼ぶんだけどね。ということには、気がつかない。

「炭酸ガス3倍だってさ!とっくに溶けきってるのに、まだ背中にしゅわしゅわして、気持ちいいぞ~~。お前も早くはいってこいよ!」

にかっ!と白い歯を見せて笑う男は太陽のようで、悪気のないことが長所でもある。

「ふ、んとに、も~~。」

たくさん文句を言ってやろう、と思っていたのに、拍子抜けるじゃないか。

「ちょっと、待っててね。」

ぱぱっと手早く服を脱ぎ捨てると、あそんで、かまって。と期待をこめた眼差しでちぎれんばかりに尻尾をふっている恋人のご機嫌をとりにゆく。

あーあ。  結局。
惚れたもん負け、ってことなのかなあ。

みんなに「大ちゃんはまおに甘い。」とか言われるけど、実はおれのほうが甘やかしている事実はそうそう知られていない。

「ここのところ、腰痛がキツくてさあ。」
「・・・自業自得なんじゃ、ないの?自粛すればいいのに。」

いい年なんだからさ。

湯の中ですっかりリラックスしきって弛緩している股間を、意味ありげに、ぺろりん、と撫であげてやる。
疲れた。とか言いながら、「やっぱりもう一回。」とかって毎晩励んでたら、そりゃ腰も痛くなるでしょ?

それに・・・正直、ちょっとしつこい。
タフ、と言えば、タフなんだろうけど。
散々弄られて、昇りつめさせられて、おかしくなりそう。
ってころに、やっと自分の快感を追うことに集中しだす大ちゃん。
・・・まあ、自分のことは後回しにして、ってゆー愛情を感じないでもないから、それはそれでいいんだけどさ。

「ばっ!そっちじゃねーよ。稽古に決まってるだろーが、稽古に!
今日も後輩にマッサージしてもらったけど、やっぱりツボがさあ。ずれてるんだよな。」
「・・・どうだか。大ちゃんが違う意味で意識散らしてるから、効かないんじゃないの?」

「お前、細いのにタフだよなあ。」
「・・・残念ながら、10代のころから誰かさんに鍛えられてるので。」

大ちゃんの手のひらが、脇腹から腰のあたりをすすーっと撫で降りてゆく。
この手のひらに触れられるとどうなるか。を知っている肌はそれだけで期待に震えて粟立つ。
・・・悔しいから、顔に出してやらないけど。

更新日:2015-11-11 16:10:05

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いつまでも大まおが好き!その3