- 7 / 25 ページ
窓のなか。
「・・・やっぱり、さみしい、よね。」
先程から、ミルクも砂糖も入っていないコーヒーをぐるぐるとスプーンで無意味にかき混ぜている友人を見詰める。
「・・・ああ、うん。そうかもね。」
長い間の付き合いで、彼がこんなふうに愚痴ったことはない。
いつもはそんなふうに感じることはないのだろうけど。
人肌恋しい季節には、秘めた恋、というものがしんどいときもあるのだろう。
「そうだよねっ!!デートぐらい堂々としたいよね!」
と、思いっきり同意してあげられないのが、罪悪感のような、優越感のような。
同性で恋をしている、という悩みを打ち明けられる数少ない友人だというのに。
「・・・意外に、みんな気にしてないものかもよ?」
すっかり秋めいたファッションになった人々が、時折吹き付ける風に首をすくめながら、窓の外を歩いてゆく。
こんなふうに転ばぬ先のなんとやら。ばかりを心配ばかりしている俺たちの世界なんて存在しないように。
じゃれあいながら笑いこけている人たち。
ポケットに手を突っ込んだまま、後ろからくる友達に話しかけているオトコノコ。
・・・そもそも、自分自身がそんなふうに周りの目、というものを気にしたことがない。
だって、とっても自然に。
周りからみたら、どーのこーの。とか思う隙さえないぐらい、
さりげなくエスコートしてくれる大ちゃんがいたから。
「好きだよ。」と思いを込めて見詰めたら、「かっわいいなあ。お前。」
なんて、頭をぐしゃぐしゃと撫でてくれる大ちゃんがいたから。
だから、正直「さみしい。」という感情が理解できない。
もちろん、会えない寂しさだとかはわかるけど。
側にいるのに触れられないさみしさ、なんてわかんない。
俺がふざけていても、絶妙のタイミングでつっこみを入れてくれる。
まるで、触れることが当たり前かのように。
だから、世の悩み、とはちょっとずれている。
人の目が気になるからデートしても楽しくなくて、
ついつい「おうちごもり」になってマンネリ化するんだよね。
なんて、憂いた表情でうつむく友人とはむしろ真逆な。
おうち大好きな大ちゃんをいかにして、お外にひっぱり出すか。
で、どんな甘えテクニックを使おうか。と頭をひねるぐらいで。
あまりにも恵まれすぎていて、なんだかなあ。とは、思うのだけど。
そもそも、想いが通じ合って側にいれる。ということが奇跡に近いことなんだよね。
愛される。ということは、決して当たり前のことではないのだから。
「・・・でも、そうやって悩める、というのは幸せなことだよね。」
「・・・そうだね。」
まだ少しばかりさみしそうな色を残した友人が、ふっと思い出したように微笑み。
ぐるぐると円を描いてばかりだったスプーンが、カップのふちでチン。と音をたてた。
窓のなか。
ぬるくなったはずのコーヒーが、先程よりもほんの少しあったかく感じた。
先程から、ミルクも砂糖も入っていないコーヒーをぐるぐるとスプーンで無意味にかき混ぜている友人を見詰める。
「・・・ああ、うん。そうかもね。」
長い間の付き合いで、彼がこんなふうに愚痴ったことはない。
いつもはそんなふうに感じることはないのだろうけど。
人肌恋しい季節には、秘めた恋、というものがしんどいときもあるのだろう。
「そうだよねっ!!デートぐらい堂々としたいよね!」
と、思いっきり同意してあげられないのが、罪悪感のような、優越感のような。
同性で恋をしている、という悩みを打ち明けられる数少ない友人だというのに。
「・・・意外に、みんな気にしてないものかもよ?」
すっかり秋めいたファッションになった人々が、時折吹き付ける風に首をすくめながら、窓の外を歩いてゆく。
こんなふうに転ばぬ先のなんとやら。ばかりを心配ばかりしている俺たちの世界なんて存在しないように。
じゃれあいながら笑いこけている人たち。
ポケットに手を突っ込んだまま、後ろからくる友達に話しかけているオトコノコ。
・・・そもそも、自分自身がそんなふうに周りの目、というものを気にしたことがない。
だって、とっても自然に。
周りからみたら、どーのこーの。とか思う隙さえないぐらい、
さりげなくエスコートしてくれる大ちゃんがいたから。
「好きだよ。」と思いを込めて見詰めたら、「かっわいいなあ。お前。」
なんて、頭をぐしゃぐしゃと撫でてくれる大ちゃんがいたから。
だから、正直「さみしい。」という感情が理解できない。
もちろん、会えない寂しさだとかはわかるけど。
側にいるのに触れられないさみしさ、なんてわかんない。
俺がふざけていても、絶妙のタイミングでつっこみを入れてくれる。
まるで、触れることが当たり前かのように。
だから、世の悩み、とはちょっとずれている。
人の目が気になるからデートしても楽しくなくて、
ついつい「おうちごもり」になってマンネリ化するんだよね。
なんて、憂いた表情でうつむく友人とはむしろ真逆な。
おうち大好きな大ちゃんをいかにして、お外にひっぱり出すか。
で、どんな甘えテクニックを使おうか。と頭をひねるぐらいで。
あまりにも恵まれすぎていて、なんだかなあ。とは、思うのだけど。
そもそも、想いが通じ合って側にいれる。ということが奇跡に近いことなんだよね。
愛される。ということは、決して当たり前のことではないのだから。
「・・・でも、そうやって悩める、というのは幸せなことだよね。」
「・・・そうだね。」
まだ少しばかりさみしそうな色を残した友人が、ふっと思い出したように微笑み。
ぐるぐると円を描いてばかりだったスプーンが、カップのふちでチン。と音をたてた。
窓のなか。
ぬるくなったはずのコーヒーが、先程よりもほんの少しあったかく感じた。
更新日:2015-10-19 11:06:25