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同室のカラクリ

どうしてか、同室になると落ちつかないヤツがいる。
仕事でも、プライベートでも、相部屋なんて初めてじゃないのに。

部屋にはいるなり、ヤツがベッドにダイブする。

「つっかれた~~。」
「おい!そのまま寝るなよ?疲れが取れないぞ!風呂に入ってから・・。」

ゆさゆさと揺り動かしてみるが、「んん・・・。」と生返事を返すのみ。

「まったく、しょーがないなあ。」

撮影のときは誰よりもアンテナを張りまくってエネルギーを消費しているぶん、疲れも人一倍なのだろう。

「がんばってるもんな。お前。」

そっと髪に触れると、ふっと顔の表情が緩む。
決して険しい顔をしていたわけではないけれど、硬いつぼみがほどけるようにふわ。と和らいだ表情を見て、やっぱり緊張していたんだな。と思う。

「ん・・。きもち・・・いい・・・。」

半ば寝言のようにささやいて、子猫のように甘えた仕草を見せる姿に、胸の奥がひきつれるような痛みを覚えた。
髪に触れるだけじゃなくて、力強く抱き締めたいような。
指先だけじゃなくて、唇で肌に触れたいような。

「・・・馬鹿だろ。俺。」

後輩にちょっと心を許してもらったからって、ちょっと甘えられたからって、その気になるなんておかしい。
二人っきりの空間だとわかっていて、コイツが急に緊張をほどくからおかしな気分になっているんだ。

仲のよい仕事仲間と相部屋。
たったそれだけのことだ。

何度も経験したことがあることで、トクベツなことじゃない。
仕事以外の顔を知ったことだって、たくさんある。

・・・なのに、どうしてコイツだけは違うのだろう?

髪に絡めた指先を、そのまま項にもっていって引き寄せたくなる衝動をこらえ、引きはがす。

「風呂だろ?風呂・・・・。」

もともと頼られるとか、世話を妬く。ということが好きだからだ。
人一倍尊敬と信頼を寄せてくれて、ふいに甘えられて、心がくすぐられているだけだ。
たくさんの仕事仲間の中で、他のやつよりちょこっと気持ちのウエイトが大きいだけ。

よくわからない感情に、色々理由をこじつけて自分自身にいい訳してみるが、どれもすっきり説明できない。
それでも、勢いよく噴出した湯とともに、少しだけ自分の中にわだかまっていたものが流れてゆくような気がした。

・・・どんな理由であれ、まおがトクベツってのは、確かなんだろうな・・。

更新日:2015-12-22 11:12:31

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いつまでも大まおが好き!その3