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キャンディー・ボックス

「あー・・。あ。あ。」

寒さに負けて、ついつい暖房を入れたまま寝てしまった。
起きるなり喉に違和感を感じて、手のひらで押さえる。

「しくじったなあ。」

声がでない。というわけではないけれど、声がのどにひっかかる。

「まお~。」

と、呼びかけて、アイツは遠い空の向こうだったことに気がつく。


棚の上には、からっぽのキャンディー・ボックス。

いつもこの季節には、カラフルなキャンディーがぎっしり詰まっていた。


少しでも、喉を押さえたりしてようものなら、

「大ちゃん、喉痛いの?ほら、のど飴。」

と、とびっきりの笑顔で、まおの手のひらの上にカラフルなキャンディーがのっかっていた。


からっぽのボックス。
からっぽの心。


お洒落なまおが気に入って購入したボックスは、主を失って静かにたたずんでいる。

言葉も発っせずに、じっと帰りを待っているボックスは寂しそうに見えた。


「帰り、のど飴でも買ってくるかな。」





袋から取り出して、一粒づつボックスに入れる。
コトン・コトンと音をたてるたびに、満たされてゆくボックスと己の心。


いっぱいになったボックスを振ると、カラカラと軽快な音をたてた。


「風邪、ひいてんなよ。まお。」


人のことに気をつかうくせに、人一倍寒がりなまおのほうが、暖房が欠かせない。

今頃、エアコンをガンガンに効かせたままソファでうたたねでもしているかもしれない。



キャディー・ボックスをゆらゆらと揺らしながら、遠く離れた恋人の寝顔を思い浮べるのだった。


更新日:2015-12-22 09:25:15

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いつまでも大まおが好き!その3