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その指にふさわしいもの
11月11日。午後11時11分。
「わお!ぞろ目だよ~~!早く早くっ!!12分になっちゃう!!」
デジタル時計を片手に、まおが興奮気味に駆け寄ってくる。
「おお!ほんとだ。なんか嬉しいよな。こういうのって。」
だから何だ?と言われてしまえばそれだけのことなんだけど。
買い物に行って4444円です。とかって言われると、何かラッキーなことでもおこりそうで、
誰かに話したくてうずうずしてしまう。
「ただいま~。」と言った顔が「にやけてるよ?何かいいことあった?」
と、必ずまおに聞かれてしまうぐらいわかりやすい俺。
32歳にもなってなんだかなあ。と思わないでもないけど、
まおも嬉しそうに訊ねてくれるから、こどもっぽくてもいっか、と思う。
後ろからとびつく勢いで抱き着いてきたまおに、ん?と、タバコをくわえたまま時計を覗き込む。
「あ~。もうっ、また吸ってる!」
「しょーがないだろ?禁煙したらストレスで太っちゃうんだから。」
「大丈夫だよお。大ちゃんのは贅肉じゃなくて、筋肉だから。」
すりすりと頬を寄せながら、ぺたぺたと胸を手のひらで触ってくる。
「・・・や、30過ぎるとマジでやばいんだって。」
「・・・そっかなあ?」
「お前に見えないところで色々努力してんの!」
10代のころは、一刻も早く大人になりたい。と思っていたのに、いざなってみるとこんなにも早く月日が経つものだとは思わなかった。
20代後半なんて、理由のない焦燥感のようなものに駆られてとにかく早く結婚しなきゃ。とか思った。
大人になったつもりでいたあのころ。
「・・・まあ、でも喉のためにも良くないし、控えなきゃなあ。」
「そーだよ!ほらっ!!」
むぐっ!
取り上げれたタバコの変わりに押込まれたのは、ふあん。と甘い香りのするチョコレート。
「今日は、ポッキーの日だからね!ほらほら、口寂しくなったらこれでも銜えてなさい!」
「・・・はぁい。」
だから、太るっつってるだろーが。
心の中でツッコを入れてみるが、まおの得意げなどや顔に思わず素直に返事をしてしまう。
「大の大人がこれ。ってマヌケじゃねー?」
「そんなことないよっ!大ちゃんなら、ポッキーでもかっこいいって!」
ほらほら、記念にシャメ撮ろう?とまで言いだす始末。
そういえば、ガキのころはシガレットチョコとかを加えて大人になったつもりでいたよなあ。
クス。とポッキーの甘さにつられて、思い出し笑いをしていると。
「あっ!何笑ってるんだよお。大ちゃんのスケベ。」
「おまっ!スケベな思い出し笑いだと決め付けるなよ!失礼な!」
「思い出し笑いの9割はスケベな想像だって言うじゃん。」
「あ~。まあ、否定はしないけど。今はピュアな少年時代を思い出してたの!」
そもそも、その9割はお前が占めてるんだってことをわかってるんだか。
「・・・ま、いいけどね。」
ほら、お前も好きだろ?チョコ。
と、まおの後頭部を引いて、口に銜えたままのポッキーを押し込む。
「大ちゃんとするの初めてだよね。」
誰が最初に考えたのか。
罰ゲームとして考案された「ポッキーゲーム」を色んなヤツとしてきたけど。
こんなに共演することが多いまおとは意外なことにしたことがない。
「・・・そりゃ、罰になんないからだろ。」
「・・・そっかあ!大ちゃん、頭いいね!」
「・・・馬鹿か?お前は。」
きらきらっ!と尊敬の眼差しを向けられて、本当に気がついてなかったのか?と、しげしげと見詰めてしまう。
「・・・まあ、天然だもんな。」
俺たちの関係なんて、ギョーカイの人間ならば誰でも知っているような周知の事実で。
自分たちは本気で罰ゲームなことをさせられているのに、俺たちだけ役得にしかならないことをさせてくれるほど、世間は甘くない。
さくさくさくっ!
と、おいしそうにポッキーを頬ばったまおが、最後にちゅ!と音をたててキスをする。
「ん・・。もうちょい。」
離れてしまった唇がさみしくて、歯列を割って追いかける。
「・・・もう、太るんじゃ、なかったっ・・・の・・・。」
抗議を上げる声が、途切れ途切れになってゆく。
「口寂しいの、紛らわせてくれるんだろ?」
ポッキーより、よっぽど効率がいい。と、舌を絡ませて、吸い上げるとほのかにチョコの味がした。
「・・・最強だな。まお味。」
誰にも譲ってやんねーけど。
やっぱ、ポッキーはまお味に限るわ。
「わお!ぞろ目だよ~~!早く早くっ!!12分になっちゃう!!」
デジタル時計を片手に、まおが興奮気味に駆け寄ってくる。
「おお!ほんとだ。なんか嬉しいよな。こういうのって。」
だから何だ?と言われてしまえばそれだけのことなんだけど。
買い物に行って4444円です。とかって言われると、何かラッキーなことでもおこりそうで、
誰かに話したくてうずうずしてしまう。
「ただいま~。」と言った顔が「にやけてるよ?何かいいことあった?」
と、必ずまおに聞かれてしまうぐらいわかりやすい俺。
32歳にもなってなんだかなあ。と思わないでもないけど、
まおも嬉しそうに訊ねてくれるから、こどもっぽくてもいっか、と思う。
後ろからとびつく勢いで抱き着いてきたまおに、ん?と、タバコをくわえたまま時計を覗き込む。
「あ~。もうっ、また吸ってる!」
「しょーがないだろ?禁煙したらストレスで太っちゃうんだから。」
「大丈夫だよお。大ちゃんのは贅肉じゃなくて、筋肉だから。」
すりすりと頬を寄せながら、ぺたぺたと胸を手のひらで触ってくる。
「・・・や、30過ぎるとマジでやばいんだって。」
「・・・そっかなあ?」
「お前に見えないところで色々努力してんの!」
10代のころは、一刻も早く大人になりたい。と思っていたのに、いざなってみるとこんなにも早く月日が経つものだとは思わなかった。
20代後半なんて、理由のない焦燥感のようなものに駆られてとにかく早く結婚しなきゃ。とか思った。
大人になったつもりでいたあのころ。
「・・・まあ、でも喉のためにも良くないし、控えなきゃなあ。」
「そーだよ!ほらっ!!」
むぐっ!
取り上げれたタバコの変わりに押込まれたのは、ふあん。と甘い香りのするチョコレート。
「今日は、ポッキーの日だからね!ほらほら、口寂しくなったらこれでも銜えてなさい!」
「・・・はぁい。」
だから、太るっつってるだろーが。
心の中でツッコを入れてみるが、まおの得意げなどや顔に思わず素直に返事をしてしまう。
「大の大人がこれ。ってマヌケじゃねー?」
「そんなことないよっ!大ちゃんなら、ポッキーでもかっこいいって!」
ほらほら、記念にシャメ撮ろう?とまで言いだす始末。
そういえば、ガキのころはシガレットチョコとかを加えて大人になったつもりでいたよなあ。
クス。とポッキーの甘さにつられて、思い出し笑いをしていると。
「あっ!何笑ってるんだよお。大ちゃんのスケベ。」
「おまっ!スケベな思い出し笑いだと決め付けるなよ!失礼な!」
「思い出し笑いの9割はスケベな想像だって言うじゃん。」
「あ~。まあ、否定はしないけど。今はピュアな少年時代を思い出してたの!」
そもそも、その9割はお前が占めてるんだってことをわかってるんだか。
「・・・ま、いいけどね。」
ほら、お前も好きだろ?チョコ。
と、まおの後頭部を引いて、口に銜えたままのポッキーを押し込む。
「大ちゃんとするの初めてだよね。」
誰が最初に考えたのか。
罰ゲームとして考案された「ポッキーゲーム」を色んなヤツとしてきたけど。
こんなに共演することが多いまおとは意外なことにしたことがない。
「・・・そりゃ、罰になんないからだろ。」
「・・・そっかあ!大ちゃん、頭いいね!」
「・・・馬鹿か?お前は。」
きらきらっ!と尊敬の眼差しを向けられて、本当に気がついてなかったのか?と、しげしげと見詰めてしまう。
「・・・まあ、天然だもんな。」
俺たちの関係なんて、ギョーカイの人間ならば誰でも知っているような周知の事実で。
自分たちは本気で罰ゲームなことをさせられているのに、俺たちだけ役得にしかならないことをさせてくれるほど、世間は甘くない。
さくさくさくっ!
と、おいしそうにポッキーを頬ばったまおが、最後にちゅ!と音をたててキスをする。
「ん・・。もうちょい。」
離れてしまった唇がさみしくて、歯列を割って追いかける。
「・・・もう、太るんじゃ、なかったっ・・・の・・・。」
抗議を上げる声が、途切れ途切れになってゆく。
「口寂しいの、紛らわせてくれるんだろ?」
ポッキーより、よっぽど効率がいい。と、舌を絡ませて、吸い上げるとほのかにチョコの味がした。
「・・・最強だな。まお味。」
誰にも譲ってやんねーけど。
やっぱ、ポッキーはまお味に限るわ。
更新日:2015-11-28 14:44:30