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眠り王子

「おっしゃ!セット完了!!」

パソコンに向かって誕生日ブログを作成していた大ちゃんが、ガッツポーズをとって、くるん、と振り返る。
普段は全然マメじゃないくせに、イベントが絡むと急にマメ男になる癖は、昔っから変わってない。
・・・ま、いくつになっても誕生日って嬉しいものなんだろうけどね。

「お疲れ。何か入れる?」

座り仕事で疲れたかと思い、問いかけると、目をしばたたかせてすりよってくる。

「・・・うんにゃ。ゴロゴロしたい。」
「・・・ん。そうだね。」

後ろから抱きついてくる大ちゃんの腕は欲情のそれ、というよりは甘えてきている強さだ。
ちゅ。ちゅ。と小さく可愛らしいキスを落としながら、ゆっくりと胸の上を這い回る手のひらは、
煽り立てるたてるのではなく、ぼくの存在を確かめているように見える。

「連日の舞台で疲れてるでしょ?」
「ん~~。テンションあがってっから、気にならないけど。こうやってまおを抱いてると眠くなる・・・。」

「ああっ!もうっ!!立ったまま寝ないでよ??どう考えたって、支えきれないから!」
「ん~。じゃあ、ベッドまで連れていって~~。」

本当に、明日33歳になる男だろうか?
出会ったころよりも、どんどん幼くなっているように感じるのは気のせいだろうか?
9歳「も」離れている、と感じていた距離間は、年月を重ねるごとに縮んでいくような気がする。

以前、馬場っちにそれとなく漏らしたら
「そりゃ、若い子と付き合ってる大ちゃんが若返って、まお君が大人っぽくなったんだよ。
よく夫婦は似てくるって言うじゃない?」
と、言われて、そんなものだろうか?と、思ったけれど。

少し前のぼくたちは、良くも悪くも似ていた気がする。
大人にならなきゃ。成長しなきゃ。って、一所懸命背伸びして、がむしゃらに頑張って。
お互い高めあうのが、理想の関係で、弱みだとか甘えだとかを見せ合うのは馴れ合いだと思っていた。
若気の至り、という言葉で片付けるにはあまりにもきらきらしていた毎日だった。
あの日々がなければ、きっと今の位置に二人とも立っていなかった、と思うと、必要な背伸びだったと思う。

・・・だけど、今は。
大ちゃんが幼く感じるのが、少しわかる気もする。

ありのままの自分でも認めてもらえるんだ、という余裕みたいなものが出てきたんだと思う。
幼いようでいて、いきがって背伸びするのをやめた大人になった。ってことなのかもしれない。

「もう~~、ちゃんと自分で歩いてよ?」
「・・・ありがと。まお。」

半分寝ているはずの割りには、妙に熱のこもった口接けを耳たぶにささやかれるようにされて、確信犯ではなかろうか?と疑いたくなるけれど。
・・・ま、いっか。
明日は誕生日なんだし、少しぐらい甘えさせてあげても。

更新日:2015-11-11 16:12:49

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いつまでも大まおが好き!その3