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【外伝】我ら、勇者未満!③ 魔術師の章

果てなき砂漠の真中で…その子は、ただ1人、立ち尽くしている。正面を見据える瞳は、しかし、何も映してはいない。

…本当に?

その瞳には、確かに、自分の姿が写り込んでいるのに…?

何の感動も、表情すらもなく、向けられる面…それが、何故、これ程に愛しいのだろう。その子が、自分の半身であるからか。

…本当に?

確かめる方法など、知らない。それでも、確かめたい。抱きしめようと伸ばした手は、しかし、その子に触れることはなく…離れていく。横暴な力により、引き離される。遠く…その名を呼ぶ隙さえも与えられずに。

「…必ず、迎えに来るから…!」

その声は、届いただろうか?何も覚えることのない、あの子に。いや…涙に掻き消されたかも知れない。それでも、祈った。

(待っていて…)

…けれど…それは、叶わぬ願い。約束を果たすまでに、十年の時が過ぎた。

見つけ出せなかった。永久に、失われてしまった。

…本当に?

年を重ね…今もまだ、探し彷徨う自分に気づく。夢の中で…

更新日:2015-09-11 18:13:40

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