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シェルター外へ

 コメットはレイクが何の攻撃をしてきたのか、すぐには分からなかった。
 少年は何か電線のケーブルのような物を右腕に巻いていて、手には鉄の棒を持っていた。
 さらに左腕には火炎放射器らしい機械を抱えていたのだが、それはすぐに脇へ捨ててしまった。どうやらそのバーナーで、壁のマジックミラーを破ったようだ…とコメットは見て取った。
 しかし右手に持つただの棒が、バーナーより強力な武器になるとは到底思えなかった。


 だが彼はレイクという人間を侮っていた。少年はこういう時に変な知恵が回る人物に相違なかった。

 相手の攻撃は唐突に始まった。
 突然、レイクが右手に持った鉄棒を自分に向かって投げてきた。
 それでコメットはとっさに腕で顔をかばった。鉄棒はその腕で角度を変えて落ち、回転した棒の先で額をしたたか打つハメになった。
 彼がうめいて目を開けると、右腕には鉄棒とケーブルがしっかり巻き付いてしまっていた。
 主任は正面に立っていたはずのレイクを探したが、相手はその隙にどこかへ走り去っていた。
 ユースが狙いなのかと自分の近くを見回したがおらず、やがて上がっていくシェルターの所に立っているのが見えた。
 少年はシェルターについた取手穴に、ケーブルのもう片端を通していたのだ。
 ケーブルの先はあらかじめ輪っか状にしてあった。レイクは顔を真っ赤にして引っ張り、その先を防音室のドアノブに引っ掛けてしまった。
 コメットはシェルターの上昇とともに、自分の右手が次第に引き上げられていくのを感じた。




 彼は部屋の天井の高さを見、自分が片手で上まで引き上げられた場合の状況を考えた。
 惨憺たる予測に思わずため息が出た。そして改めて、隊員や医療助手が一人もレイクを追ってこない事に疑問を感じた。
コ「他の大人をどうしてきた?」
 コメットはその場で右手を上げた形になりながら、相手に尋ねた。
レ「あんたも殺してやる。今すぐツィーニャの居場所を言わないと、バーナーで下からあぶるぞ」
 脇に放り出してあった機械を拾い上げてきて点火すると、少年は炎をかざして主任に詰め寄った。
コ「君のやった事は二度と忘れないからな」

更新日:2016-03-11 17:23:08

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ORIGIN180E ハルカイリ島 収監編 2