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お仕置き

 その同じ時間、ユースは防音室の中にいた。
 少年はコメットに全身を攻撃されて殴られ、声高く悲鳴を上げていた。

 暗闇の中、彼は冷たい床の上を両手両足で這いつくばって逃げた。何度逃げてもどこからか、気配も見せずに相手の鋼鉄のような拳が伸びてきた。
 際限なくユースは殴られたり、足を払って転がされたりした。そうして猫が獲物をいたぶるように、コメットは少年をもてあそんでいた。


 以前のヘリコプターの中での接触とは比べ物にならないほど、ユースは体に衝撃を受けていた。
 前の時は相手から「体に侵入した」と言われても、何の感覚もなかったのだ。それで本当に、何かを挿入されたのかどうかすら分からなかった。

 だが今味わっている苦痛は、紛れもなく本物だった。
 彼は腰と腹を中心にして攻撃を受けていた。体中に激痛が走って何度も気絶をしたが、そのたびに頬を殴られて床の上で目覚めた。
 少年はもうずいぶん前からしゃべる余裕をなくしていて、ただ相手の暴力から逃れようと出口だけを捜し回った。
 しかし彼が連れ込まれた防音室は、まるでからくり屋敷のように造りが変化してしまっていた。
 前とは違い、今では全体がシャッターのような物で覆われていた。明かり一つ外に漏らさず、ドアさえどこかへ消えてしまった。どの壁にしがみついてもツルツルと手応えがなく、どこにも継ぎ目や柱やボタン類が見当たらなかった。
 明かりが消されて真っ暗だったので、自分の足すら見えないほどだった。逃げ場が全く見当たらない事に、少年はだんだん絶望感をつのらせていった。


 自分の流す血や汗で床を滑りながら、彼は無意識の内に助けを呼んでいた。
 もう立ち上がる力もなく、這ってやっと床の端の壁までたどり着いた。
 しかしそこで主任に捕まって、また下から腹に蹴りを入れられた。ユースは口から胃の中味を吐いて、床に転がってのたうち回った。
 頭の芯が赤く染まっていた。
 次の瞬間、肛門へ硬い物が挿入されて、途端にユースは声を張り上げた。思考の止まった脳が、何故か彼に老住を回想させたようだった。
ユ「教授!」

更新日:2015-12-26 10:14:27

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ORIGIN180E ハルカイリ島 収監編 2