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悲鳴の主は?

 時間の観念のない暗闇の中で、その声だけがレイクの脳に突き刺さって響いていた。
 それは先ほど聞いたツィーニャの悲鳴に似て、細く弱々しく頼りなかった。

 ───あんなに近くにいたのに、何故彼女は俺ではなくタケルに付いているんだろう‥

 そう彼は思った。それに呼びかけたら、彼女が恐がった理由も不明だった。

 ───ツィーニャは声をちゃんと受け取ったはずなのに。俺だと分かっていながら、悲鳴を上げて逃げ出そうとした…

 その事に、レイクは少なからずショックを受けていた。彼女のパニックに引きずられるようにして、自分まで心を乱してしまったのだ。
 おまけに彼の近くには、ユースに似た誰かがいた。
 その人物は意地が悪く、腰の痛い所を執拗に攻撃してきた。彼は刺すような鋭い痛みに我慢できず、やがて意識を遠のかせてしまった。
 その間にツィーニャの顔は消え、ガラスの向こうにいた少女の行方は分からなくなってしまった。


 彼は耳にうるさく入ってくる声が、ツィーニャだと思って注意してみた。
 しかし聞いている内に、それがだんだん彼女ではないと分かってきた。

 “まずこの暗闇を何とかしなくては‥”とレイクは思った。
 彼は闇を押しのけようと、一生懸命に頭の中でもがきまくった。
 だがいつものように、悪夢はなかなか退散してくれなかった。目が覚めたかと思っても、依然としてまだ夢の中だったりするのだ。時がたつと再び同じ暗闇に戻っていたりした。
 レイクは自分で声を出してみた。
 これはなかなか効く手段で、時には両手まで動かせる事があった。少しずつだが、そうしていれば目は覚めていくのだ。
 彼は今、暗闇の恐怖よりはツィーニャの行方を知りたい一心で目覚めようとしていた。
 耳への叫びはまだ続いていたが、言葉の内容がだんだん聞き取れなくなっていった。同時に相手が何と言っていたのかも、彼の記憶から急速に薄れていった。





 少年が目覚めると、それはどこかで見た場所だった。
 天井も壁も同じクリーム色のなめらかな素材で出来ていて、端が直角ではなく丸くカーブするような設計になっていた。

更新日:2015-10-20 20:04:59

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ORIGIN180E ハルカイリ島 収監編 2