• 1 / 3 ページ

no title



「はあ、またか?」

風呂上がりの俺を見たアラタさんは、突然げんなりとした声を上げた。

「なにが?」

「あれから何日経つんだ?」

「だからなにが?」

「お前、したい時にはシャツを着てないんだ。もしかして自覚してないのか!?」

言われて見た自分の恰好に、俺は言葉を失くす。

「あー。でももう一週間近くなるっしょ。」

「まだ一週間経ってないだろ。」

「んー、普通ってどんくらい?」

「俺が知るはずないだろう。」

「だってアラタさんお医者さんじゃん。」

「まだ医学生だ。ましてや俺の専門は小児科だぞ。」

食い下がる俺に、アラタさんは苛ついたように答える。こうなっては恐らく今夜は無理であろう。そうなればこの際ついでだ。

「んー、野沢さんたちってどうしてんすか?」

「知らない。駒澤に訊けばいいだろう。」

「でもアラタさん、みんながどうしてるか知りたくないっすか?」

「べつに。知っても知らなくても変わらないから。」

まったくアラタさんらしいといおうか、我が道を行く恋人だ。

「葉山さんに訊いたことは?」

「葉山の場合は訊くまでもない。」

「なんでそこまで詳しいんすか。」

いくら聡いにしても。

「バカップルは訊くまでもないだろう。」

「いつも思うんすけど、ギイ先輩ってそんなにバカっすか?」

「住人が留守にしている間に、潜り込んでするような奴はばかだろう。」

「は?」

「いずれにせよ、そんなに知りたければ自分で調べろ。俺は関係ない。」

「はあ………。」

つれないといおうか、まことに非協力的な恋人である。

だが、これ以上求めて更に不機嫌になられては、明日以降も同じ状況が続きそうだ。そうなると、アラタさんの機嫌が回復するまでひたすら待つしかなくなる。なので仕方なく、俺は部屋の片隅でパソコンに向かった。

しかし、ネットを開いてもそれらしいページにはヒットしない。

「アラタさん、ネット上にあると思う?」

「なにが?」

「アラタさんが調べろっつったんじゃん。」

言われたアラタさんは暫し考えていたが、みるみるうちに眉間に皺を寄せて立ち上がった。

「くだらなさすぎて検索にも引っ掛かからないんだろ。」

そしてそのままドアを開け部屋を出て行った。



更新日:2015-09-05 22:44:05

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook