- 13 / 13 ページ
車の振動とは違う振動に、恭弥は胸ポケットを探る。
マナーモードの携帯が、隼人からの着信を告げていた。ディーノの手を肩から引き剥がし、電話に出る。
『・・・なんで、起こしてくんねぇんだよ?』
開口一番の不機嫌な声に、恭弥は苦笑する。
「よく寝てたから、さ」
『一週間も留守にすんだぜ・・・せめて、キスぐらいさせろよ』
「僕はしたよ?」
『だったら、起こせって・・』
「起きなかったキミが悪い」
『・・・ったく。気を付けて行ってこいよ。あー、これ、ちゃんとお前に云いたかったのに・・・』
悔しそうな声音。隼人の表情が見える気がして、恭弥は思わず微笑む。
「心配ないから、ちゃんと待ってて」
『おう。留守はまかせろ』
「じゃあ・・・切るよ?」
『あ、うん・・・』
名残り惜しそうな声に、恭弥もつい切りそびれる。
『あの、さ』
「うん?」
『・・・愛してる』
照れくさそうな声が、云った。
「 ─── それは、わかってるから」
『じゃあ、な』
慌てて、通話が切られた。きっと今頃、向こうではものすごく恥ずかしげな顔をしているだろう・・・
「・・・まったく、んな色っぽい顔しやがって」
ディーノの指先が、恭弥の顎を捉える。
「隼人と上手くいってるらしいな」
フン・・・と鼻先で笑ってみせ、恭弥は艶然と微笑んで見せる。もちろん、顎はディーノの指先に預けたままだ。
「おかげさまで、ね」
薄く笑った唇を、ディーノの指先が辿る。
「 ─── 楽しいか?キョウヤ」
「正直、面倒に思うこともあるよ・・・」
ディーノの指を顎からはがし、指先を絡める。
「あなたに比べれば、隼人は何も知らないし・・・ガキだし、ね」
でも、と握り締めた携帯に視線を落とし、恭弥は微笑む。
「今はちょっと・・・幸せ、かな」
云ってくれるぜ、とディーノは唇を尖らせる。
「そんな顔されちゃ、お前に手出しできねぇな」
それでも、絡められた恭弥の指先に、ディーノは軽く唇を当ててみせる。
「・・・あぁ、そうだ・・・云い忘れてたけど、隼人はボンゴレで二番目にヤキモチ焼きらしいから、気をつけたほうが良いよ?こんなことバレたら、新しい匣の実験台にされかねないからね」
仕方なく、恭弥の指先を開放し、ディーノは憮然として呟く。
「ボンゴレで二番目って・・・一番は誰だ?まさか、恭弥、お前か?」
「僕は、三番目らしいよ」
二番と三番のヤキモチ焼きカップルなんて、ぞっとしないが・・・ディーノには、こまごまと喧嘩を繰り返す理由がなんとなくわかった気がした。
「んで?ちなみに・・・一番は?」
「 ─── 六道骸」
いやいやながら、その名を口にし、それから恭弥は意味深な笑みで唇の端をあげた。
「彼も、いろいろ大変だね・・・」
小さな呟きは、ディーノの耳にはとどかない。
『彼』とは、もちろん骸ではない。骸の心配など、決してするわけがない。その骸の愛情を今、一身に受け止めている小柄な姿を恭弥は思い浮かべる。
彼もまた、今の恭弥と同じく幸せなのだろうか・・・多分、自分同様、この関係は長くは続けられまい。気持ちがあるなしに関わらず、だ。
だが、今は、その幸せが少しでも長く続くように、恭弥はただ、祈っていた。
★ END ★
マナーモードの携帯が、隼人からの着信を告げていた。ディーノの手を肩から引き剥がし、電話に出る。
『・・・なんで、起こしてくんねぇんだよ?』
開口一番の不機嫌な声に、恭弥は苦笑する。
「よく寝てたから、さ」
『一週間も留守にすんだぜ・・・せめて、キスぐらいさせろよ』
「僕はしたよ?」
『だったら、起こせって・・』
「起きなかったキミが悪い」
『・・・ったく。気を付けて行ってこいよ。あー、これ、ちゃんとお前に云いたかったのに・・・』
悔しそうな声音。隼人の表情が見える気がして、恭弥は思わず微笑む。
「心配ないから、ちゃんと待ってて」
『おう。留守はまかせろ』
「じゃあ・・・切るよ?」
『あ、うん・・・』
名残り惜しそうな声に、恭弥もつい切りそびれる。
『あの、さ』
「うん?」
『・・・愛してる』
照れくさそうな声が、云った。
「 ─── それは、わかってるから」
『じゃあ、な』
慌てて、通話が切られた。きっと今頃、向こうではものすごく恥ずかしげな顔をしているだろう・・・
「・・・まったく、んな色っぽい顔しやがって」
ディーノの指先が、恭弥の顎を捉える。
「隼人と上手くいってるらしいな」
フン・・・と鼻先で笑ってみせ、恭弥は艶然と微笑んで見せる。もちろん、顎はディーノの指先に預けたままだ。
「おかげさまで、ね」
薄く笑った唇を、ディーノの指先が辿る。
「 ─── 楽しいか?キョウヤ」
「正直、面倒に思うこともあるよ・・・」
ディーノの指を顎からはがし、指先を絡める。
「あなたに比べれば、隼人は何も知らないし・・・ガキだし、ね」
でも、と握り締めた携帯に視線を落とし、恭弥は微笑む。
「今はちょっと・・・幸せ、かな」
云ってくれるぜ、とディーノは唇を尖らせる。
「そんな顔されちゃ、お前に手出しできねぇな」
それでも、絡められた恭弥の指先に、ディーノは軽く唇を当ててみせる。
「・・・あぁ、そうだ・・・云い忘れてたけど、隼人はボンゴレで二番目にヤキモチ焼きらしいから、気をつけたほうが良いよ?こんなことバレたら、新しい匣の実験台にされかねないからね」
仕方なく、恭弥の指先を開放し、ディーノは憮然として呟く。
「ボンゴレで二番目って・・・一番は誰だ?まさか、恭弥、お前か?」
「僕は、三番目らしいよ」
二番と三番のヤキモチ焼きカップルなんて、ぞっとしないが・・・ディーノには、こまごまと喧嘩を繰り返す理由がなんとなくわかった気がした。
「んで?ちなみに・・・一番は?」
「 ─── 六道骸」
いやいやながら、その名を口にし、それから恭弥は意味深な笑みで唇の端をあげた。
「彼も、いろいろ大変だね・・・」
小さな呟きは、ディーノの耳にはとどかない。
『彼』とは、もちろん骸ではない。骸の心配など、決してするわけがない。その骸の愛情を今、一身に受け止めている小柄な姿を恭弥は思い浮かべる。
彼もまた、今の恭弥と同じく幸せなのだろうか・・・多分、自分同様、この関係は長くは続けられまい。気持ちがあるなしに関わらず、だ。
だが、今は、その幸せが少しでも長く続くように、恭弥はただ、祈っていた。
★ END ★
更新日:2015-08-30 20:34:04