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早朝、うっすらと明るくなった部屋で、恭弥はそっと身を起こす。傍らで眠る隼人は、満足げな顔で、寝息を立てている。シャワーを浴び、身支度を整えて戻っても、まだ、夢の中だ ─── ベッドに腰掛け、恭弥はその無防備な寝顔に口元をほころばせる。
「いい子で、待ってるんだよ?・・・隼人」
目を覚ましそうにない恋人に、軽くキスをし、恭弥はそっと部屋を後にした。
迎えの車に乗り込むと、先客がいた。
「よう、キョーヤ」
「・・・おはよう」
なんで、この車に乗ってんのさ、と云いたげな眼差しでディーノを見るが、あえて口にはしない。それよりも、隼人が起きてなくて良かった、と胸をなでおろすほうが先だった。
助手席で草壁が車を出すように指示をだす。
ディーノの部下は、すでに空港に向かったらしく、周りを走る車にも、それらしい姿は見えなかった。
「・・・まったく、あなたが日本にいたって隼人にバレたらどうするのさ」
「そして、四日間を一緒に過ごしてた・・・って知ったら、ね」
ディーノの声音に潜んだ意地の悪さに、恭弥は眉間に皺を寄せる。
「嫌な言い方しないでほしいね、まるで、何かあったみたいじゃない?」
くくっ、とディーノがのどをならす。
「お前が日程を縮めろって云うから、わざわざ出向いて来てやったんだろ・・・日本で出来るコトを済ましておけば何とかなるかなと思って ─── 」
ディーノが恨みがましい眼差しを、恭弥に向ける。
「喧嘩して四日も留守にするくらいなら、最初の予定通り、十日間こっちに来てたほうがよかったんじゃないのか?」
「・・・うるさいよ、ディーノ」
隼人のために、と思って日程を縮めようとしたのだが、裏目に出てしまった。おまけに、『風紀財団』の姿まで晒すハメになるとは・・・
「どうして、隼人に隠してたんだ?ちゃんと話せばヤツだって分かるだろうし・・・こんな騒ぎにならなかったんじゃないのか?」
「・・・」
恭弥はそっぽを向き、窓の外に視線を投げる。
「隼人にも、『なんで、俺に話してくれなかった』って云われたよ」
「だろうな・・・」
「 ─── 僕だって、時々疲れる。素のままの僕で居たい時もあるんだよ・・・だから、隼人の前では、僕は僕自身で居たかったのかも、ね」
「あいつに、そう云ったのか?」
ディーノの瞳に、ほんの一瞬だが、嫉妬の色が浮かんだ。
「・・・云うわけないだろ?そんなコト・・・」
恭弥の唇に皮肉めいた笑みが浮かぶ。
「そんな弱み、僕が隼人に見せるわけないじゃない」
ディーノはあっけにとられたように口を開け、次の瞬間、爆笑した。
「そんなに、可笑しい?」
恭弥は憮然と呟く。
「・・・まったく、お前ってヤツは ─── 」
まだ、笑い足りないらしく、ひーひーと腹をよじっていたディーノだが、恭弥の肩に手をまわし引き寄せると、
「あいつには勿体ねぇよ・・・俺と拠り戻そうぜ?」
苦笑まじりに、ささやいた。
「やだね」
パシン、と肩にまわされた手を叩き、恭弥はディーノを睨む。
「あーぁ、昨夜だって、隼人と切れて俺のベッドに来るかとちょっと期待してたんだけどなぁ・・・。喧嘩して出てきたってお前を、四日間もお預けくらって持ってかれるなんてさ・・・」
ぼやき口調だが、反省した様子はまるでない。ついでに、肩に廻した手も、解除する気はないらしい。
「いい子で、待ってるんだよ?・・・隼人」
目を覚ましそうにない恋人に、軽くキスをし、恭弥はそっと部屋を後にした。
迎えの車に乗り込むと、先客がいた。
「よう、キョーヤ」
「・・・おはよう」
なんで、この車に乗ってんのさ、と云いたげな眼差しでディーノを見るが、あえて口にはしない。それよりも、隼人が起きてなくて良かった、と胸をなでおろすほうが先だった。
助手席で草壁が車を出すように指示をだす。
ディーノの部下は、すでに空港に向かったらしく、周りを走る車にも、それらしい姿は見えなかった。
「・・・まったく、あなたが日本にいたって隼人にバレたらどうするのさ」
「そして、四日間を一緒に過ごしてた・・・って知ったら、ね」
ディーノの声音に潜んだ意地の悪さに、恭弥は眉間に皺を寄せる。
「嫌な言い方しないでほしいね、まるで、何かあったみたいじゃない?」
くくっ、とディーノがのどをならす。
「お前が日程を縮めろって云うから、わざわざ出向いて来てやったんだろ・・・日本で出来るコトを済ましておけば何とかなるかなと思って ─── 」
ディーノが恨みがましい眼差しを、恭弥に向ける。
「喧嘩して四日も留守にするくらいなら、最初の予定通り、十日間こっちに来てたほうがよかったんじゃないのか?」
「・・・うるさいよ、ディーノ」
隼人のために、と思って日程を縮めようとしたのだが、裏目に出てしまった。おまけに、『風紀財団』の姿まで晒すハメになるとは・・・
「どうして、隼人に隠してたんだ?ちゃんと話せばヤツだって分かるだろうし・・・こんな騒ぎにならなかったんじゃないのか?」
「・・・」
恭弥はそっぽを向き、窓の外に視線を投げる。
「隼人にも、『なんで、俺に話してくれなかった』って云われたよ」
「だろうな・・・」
「 ─── 僕だって、時々疲れる。素のままの僕で居たい時もあるんだよ・・・だから、隼人の前では、僕は僕自身で居たかったのかも、ね」
「あいつに、そう云ったのか?」
ディーノの瞳に、ほんの一瞬だが、嫉妬の色が浮かんだ。
「・・・云うわけないだろ?そんなコト・・・」
恭弥の唇に皮肉めいた笑みが浮かぶ。
「そんな弱み、僕が隼人に見せるわけないじゃない」
ディーノはあっけにとられたように口を開け、次の瞬間、爆笑した。
「そんなに、可笑しい?」
恭弥は憮然と呟く。
「・・・まったく、お前ってヤツは ─── 」
まだ、笑い足りないらしく、ひーひーと腹をよじっていたディーノだが、恭弥の肩に手をまわし引き寄せると、
「あいつには勿体ねぇよ・・・俺と拠り戻そうぜ?」
苦笑まじりに、ささやいた。
「やだね」
パシン、と肩にまわされた手を叩き、恭弥はディーノを睨む。
「あーぁ、昨夜だって、隼人と切れて俺のベッドに来るかとちょっと期待してたんだけどなぁ・・・。喧嘩して出てきたってお前を、四日間もお預けくらって持ってかれるなんてさ・・・」
ぼやき口調だが、反省した様子はまるでない。ついでに、肩に廻した手も、解除する気はないらしい。
更新日:2015-08-30 20:33:50