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 唐突に、周囲一帯の通信回線に強制的に介入して、音声が飛び込んできた。

『面白そうなことしてるじゃねェか。オレも混ぜてくれよ、海賊ッ!!』

 黒いボディに金の羽の装飾、嘴を思わせるフェイスガードに両腕に取り付けられた大きな鉤爪。
 翼型の大型スラスターを背中に背負ったその姿は、獣の意匠を組み込んだ帝国由来の機兵を思わせた。
 視認できる程の距離にまで接近した翼の機兵は、なおも加速して両の鉤爪を大きく振り被って突進してくる。
 乱暴な口調そのままに、問答無用で攻撃を仕掛けてきた敵に対して、リムは両腕のブレイドで迎撃した。
 鉤爪の表面に循環しているエネルギーと干渉して、火花を散らしながらその動きを止めた。

「くっ……帝国の新手!?」

 離脱を試みるタイミングを狙ったかのような敵の出現には、動揺を隠せない。
 しかも、単純に力比べで押し負けそうになると言う事実は、敵の機兵の方が出力の面に於いて上回っていることの証明である。
 躊躇なく懐に飛び込んでくるその戦闘スタイルを考えても、現状でまともにやり合って無事に済む相手ではないと直感した。
 
『やるな。どこまでオレの退屈しのぎになるか、試してやるぜェ!』

「何なの、この人……!」

 勢い任せの一撃を受け流して距離を置こうとするが、敵は持ち前の機動性と反応速度でナイトメアサイザーの動きに追随してくる。
 執拗に鉤爪を振るうその姿には、狂気にも似た粘着質な思いを垣間見て、リムの背筋に冷たいものが走った。
 リルが求められるまでもなく、展開したままのファントムベインを操って威嚇砲撃を繰り返すが、間合いを詰めてくる敵の機兵と自機が射線に重なってしまう関係上、決定打を与えることが出来ない。
 白兵戦の技量は、敵の方が上のようだった。

<聞く耳持たないって感じね。リム、まともに相手をしないで振り切って!>

「分かってるけど、この人、強い……!」

 こちらから回線を開いて訴えたところで、武器を収めてくれる可能性は無いだろう。
 無邪気とも言える様子で執拗に攻撃を仕掛けてくる様子には、もはや恐怖心を抱く以外に無い。
 そんな相手とまともに口を交わせると思う程、リムは冷静ではいられなかった。
 こういう場合では、踏んだ場数がものを言うからである。
 そしてこの場には、その場数を踏み続けてきた男が居合わせていた。

「リル、ガーランドと連絡を取れるか?」

<えっ……!?>

 正人の一言に、ファントムベインの操作をしていたリルが反応した。

「俺の存在が足手まといになる。ダイダロスのランダムワープなら、如何に高機動型の機兵と言えど振り切れる筈だ」

 元々は、正人の救出を終えれば離脱するだけだったリムルたちである。
 その手段には母艦に残った仲間の協力があるだろうし、どのような手段を用いるかも幾度となく交戦してきた正人には想像できる範囲だった。
 翼の機兵の乱入はイレギュラーだったが、ここで敵を倒さなければならない理由は、彼女たちには無いのである。
 目前の脅威に目的を見失いかけていたリムルたちを、正人は現実に引き戻した。

「……リル、お願い! しばらくだったら、支援なしでも何とか持ちこたえられる!」

<……分かった!>

 ファントムベインの操作を放棄して回線を開こうとするリル。
 リムは推力を集中して後退して間合いを取ろうとするが、やはり翼の機兵は縋りつくように迫ってくる。

『オイオイ。迷いなく逃げの一手とはつれねェな。だがよッ!』

 一方的にまくし立ててくる敵の言葉と共に、叩き付けられるような鉤爪の攻撃が繰り出される。
 受け止めた衝撃を堪えながら、受け流していくリムの操縦技術は決して悪くはない。
 だが腕に加えて、機体性能の面で劣っているという事実が、事態をより悪い方向へと傾けていた。
 宇宙海賊として、奇襲的な戦術を目的として調整されているナイトメアサイザーでは、最初から格闘戦を想定して作られたであろう翼の機兵とは相性が悪い。

『この”グリフィリオン”のスピードから逃げられる訳はねェだろうがァッ!!』

「くぅっ……!」

 翼の機兵、グリフィリオンの渾身の一撃が、防御した右腕ごと機体を弾き飛ばしてしまう。
 損傷した腕は使い物にならなくなり、いよいよ防御の手が足らなくなれば成す術はない。
 推進力の全てを離脱に回しても、グリフィリオンから逃れることは出来ないともなれば、直撃こそ回避し続けているものの、撃墜されるのは時間の問題であった。

更新日:2015-08-23 11:24:28

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勇者機兵キャリバー Legend of Eternal