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 昔から馬鹿な子ほどかわいいとはよく言ったものだ。
 新卒三年目、初めて担任として受け持ったクラスの生徒が大丸だった。
底抜けに大らかで、底抜けの馬鹿だった。
 何個目かわからない赤点の答案を手に、なんで勉強しないのか聞いた自分に「勉強はしとるで。ただ、勉強した事が試験に出ぇへんだけや」と豪快な笑いで返された日には頭を抱えたくなった。
「松坂屋先生、俺、めっちゃ先生が好きや。せやから、卒業したら…ご褒美に俺といっぺんデートして下さい」
 ある日の放課後。夕日の差し込む教室で再提出のレポートを差し出しながら、珍しく真顔で大丸が告白してきた。
 子供の癖に。そもそも、男同士だろうが。てか、お前、卒業したらって…今回自分が赤点何個取ったか覚えているのか?追試クリアしないと卒業どこじゃないんだぞ?
 突っ込みたい事は山のようにあるが、真剣な眼差しに茶々を入れるのは憚られた。大丸から目が反らせないままどのくらい時間が経っただろうか?自分の意識とは関係なく、口が勝手に動いた。
「嫌だ。私は、子供と付き合う趣味はないからな。その代わり、お前が教師になってこの学校に戻ってくることができたら…その時はデートと言わず、お前の恋人になってやる」

更新日:2015-08-01 19:05:41

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