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 午前5時・・・コーヒーを入れる手を止め、恭弥はテレビの画面を見つめる。

よくもまぁ、毎日起きるものだとあきれてしまう凶悪な事件に、いつもなら素通りの視線が離れない。

  ─── 夕べから、隼人が帰らない。

 恭弥の携帯に『悪ぃ・・・ちょっと、遅くなるワ』とメッセージを残し、それ以来携帯もつながらない。

 飲み会で遅くなり、夜中に帰宅することは今までにもあった。大抵は日付が変わる前には帰って来ていたし、最悪、戻れない時には携帯にメールかメッセージを入れて、恭弥の怒りを回避することを忘れない。それなのに・・・

 一緒に暮らし始めて、半年が経っていた。週に一・二度の綱吉達の目を盗むような密会が、ひょんなことからバレて関係がオープンになると、隼人は毎日のように入りびたり、最終的に転がり込むカタチで同棲生活が始まった。大学生活も残り一年と半年、それまでのことと割り切って許した恭弥だったが ─── 一緒に暮らすことに未だに、慣れない。 

 カップから立ち上る湯気をため息で揺らし、恭弥は起きてから数杯目のコーヒーを口に運ぶ。

 夕べは、1時を廻ってもひっそりとした室内に、いい加減しびれを切らし、いらついた思いと共にベッドに入った。最悪の夢見で起きると、時刻は朝の4時。隼人の寝室を覗いてみたが、姿はなく、リビングのテーブルに置き去りにした携帯には、メールもメッセージも・・・ナシ。

 「・・・隼人の奴」

 怒りの口調とはうらはらに、胸をよぎる不安。

 隼人の身に何かあったのでは・・・咄嗟に、そう思った。はたから見れば、ただの大学生だが、ボンゴレ十代目・沢田綱吉の守護者の一人として、命を狙われる危険は常に付きまとう。だが、数日前に門外顧問の沢田家光と会った時には、ボンゴレ後継者とその守護者を狙う動きがある、などというハナシは出なかった。不穏な動きがあれば、恭弥の耳に入るはずだ。

 家光の事を思い出して、別の可能性に思い当たった。

 「 ─── まさか」

 つぶやいた唇に、カップを運ぶ。ほろ苦い、コーヒー。

 家光の呼び出しに、珍しくスーツに身を包んだ恭弥と、その姿に拗ねた視線を噛み付かせた隼人との間で、ちょっとしたいざこざがあったのは、三日・・・いや、もう四日前の事。

更新日:2015-07-31 22:08:31

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