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彷徨えるふたり 【中学生の彼女と大人の彼】シリーズ

『おかけになった電話は、電波の届かない場所にいらっしゃるか、
電源がはいっていないため、かかりません』

携帯の受話口から聞こえてくるお決まりのアナウンス────
これで聞くのは何度目かもわからない無機質な音声に、
工藤新一はイライラと手にしていた携帯をベッドの上に投げ捨てた。

マネージャーの伊達友也が部屋を出て行ってから、
すぐに灰原哀の携帯に電話をしてみたが、件のアナウンスが流れ出し、
哀の携帯の電源は落とされていた。

新一はドサッとベッドに仰向けに寝転がると、両手を頭の下にやり、
ホテルの部屋の天井を一心に見つめる。

(やっぱり、哀、相当怒ってんな。当たり前か、どうすっかな)

覚悟はしていたとは言え、哀からの拒絶がこうして現実になると、
新一の胸にもズシリと堪えるものがある。

「ああ、クソッ! ったく」

先ほどから悔しさを滲ませる言葉しか出てこない。

もしも携帯の電源が切られているとしたら、
哀に送ったメールも受信されずに読んでもいないだろう。

念の為に工藤邸の自宅の電話にもかけてみたが、
呼び出し音が虚しく鳴り続けるだけで哀が出る様子がない。

哀が中学校に行ってるのなら、学校にいる時間ではあるが……。

しかし、新一には哀が学校へは行っていないという確信めいたものがあった。

彼女に連絡がつかない状態では新一に言い訳の一つも許されない。

(まさか、このまま別れちまうなんてことはねーよな)

昨夜は哀と正月をどう過ごそうかと二時間以上も楽しく会話をしていたのに……
目を覚ましたら一夜にしてまるで世界が変わってしまったようだった。

更新日:2017-08-16 22:15:03

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秘密のふたり シリーズ1 【コナンで新一×哀】