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「さて、このボディビル大会、今年で、38回目になるわけです。すごい伝統を持つわけです。なんせ、初代チャンピオンが優勝した時に赤ちゃんだった人が38歳になり、こうして本大会に参加したりもしてるぐらいですからね」
「なるほど。毎年一回のペースで続いてきたわけですかぁ」
「ちゃうがな。半年に一回やってた頃もあったり、逆に二年に一回やってた頃もあったりで、たまたま第38回のこの大会がたまたま38年経ってただけやがな。数字が一致したからって、毎年一回のペースって決めつけるなよ!お前に一体何がわかるねん、アホ!」
「なんで、こんなケンカ腰でしか喋られへんのやろ。この子」
「お前が決めつけるからやろが」
「ちなみに次回の大会は半年後ですか?1年後ですか?」
「次回は明日や。わかるやろ。大体」
「明日…?」
「さあ、そうこうしている間に第二ブロックのビルダーたちが集まっております!中西さん、楽しみですねえ」
「しばらくあなたとは、喋りたくない!」



わぁーっ!わぁーっ!いいぞーっ!いいぞーっ!

切れてる切れてるーっ!



「さて、一番のビルダーの体、どうですか、中西さん?」
「うっ、うっ、うっ(泣)。一番のビルダーの筋肉は、かなしい、あまりにも悲しい筋肉なのです(泣)。彼は、ハトが低空飛行をして人間がびっくりするのを見るたびに、筋トレしてきたのです。彼の筋肉は、ハトが低空飛行してきたことの証。人間が舐められている、自然が人類に逆襲をしようとしている証。悲しい筋肉なのです(泣)」
「わぁーん、悲しいよぉ!そんな筋肉見たくないよぉ!やい!一番!服を着ろ!そんな筋肉見たくない!」
「そうだ!服を着ろ!気持ち悪い!そんな体、実は女子は嫌いやぞ!」



わぁーっ!わぁーっ!一番ーっ!服を着ろ!

そうだそうだーっ!服を着ろーっ!


服を着てから、ハトが低空飛行したとか、嘘でしたって言って、泣きながら謝れーっ!


ざわざわ


ざわざわ



「さて、続いて、二番のビルダーの体を見てください!仕上がってますね!中西さん!」
「うっ(泣)うっ(泣)、彼の筋肉は、悲しい筋肉なのです。彼は、今、家を出ても約束の時間に間に合いそうにないと思ったときに筋トレしてきたのです。彼の筋肉は、彼が開き直ってさぼり続けてきたことの証。彼は、文字通り、罪を体に刻印として、刻み込んでいるのです!」
「約束の時間に間に合いそうにない時、急いだほうがいいけどなあ。別に悲しくないしなあ」
「話はかわるけど、遅刻してる時に、ずっと走ってたわけじゃないのに、着く間際、走って、急いでベストを尽くしたアピールみたいなんするやつ、どう思う?」
「それは、お前だーっ!」
「ぎゃあーっ!」




ざわざわ!ざわざわ!


切れてる切れてるーっ!


わぁーっ!わぁーっ!森山良子、切れてる切れてるーっ!

更新日:2015-07-28 06:49:23

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