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出所日、朝
その日の朝、タケルは何か刑務所内が騒がしいと思いながら起きた。
彼はベッドに半身を起こして宙を眺め、しばらく耳を澄ました。しかしはっきりした人の声や物音などは聞こえてこなかった。
そこで彼はうんと体を伸ばして伸びをした。
この日はついに自分が刑務所から去る予定の日だった。
刑務所といっても、タケル自身が何か犯罪を起こして収監されていたのではなかった。彼はチップ除去の手術を受けるためにここに入院していたのだ。
その特異な手術が出来る医者というのが、タケルの父であるカンム・カジマだった。
現在カンムは中央刑務所の特別房にいる囚人で、終身刑を言い渡されながら恩赦を待つ身でもあった。
医者という職業の他に、反乱軍の司令官という肩書きを持っていた彼は、ハルカイリ島の反乱防止法のもとに逮捕され、中央刑務所に収監された。
しかし当時の反乱軍と政府の間には密約が交わされていた。ある実験の成果を無条件に譲渡する事で、カンムの身の保障が約束されたのだ。
実験は現在も進行中で、そのために政府は刑務所の中に特別房を作った。
その実験は、“人体冷凍実験”といわれるものだった。発案者エリオット・ユネスト医師が自ら被験者になり、カンムは実験全体を進める役をしていた。
一方、ハルカイリ本島を中心に活動していた当時の反乱軍は、冷凍実験に平行して数々の研究を行っていた。
政府の追求が厳しくなると、彼らはそんな研究のあらゆる実験データを超小型チップの中に隠した。
それが反乱軍関係者の子供の体に埋められて、隠蔽されたのが8年前だった。カンムを父に持つタケルは、まさにそのチップを埋め込まれた一人だったのだ。
タケルは自分に埋められたチップの事を何も教えられず、原因の分からない後遺症に悩まされながら青年期までを過ごした。
彼は医大に進学して、一時は自力で謎を解明しようとした。しかし上手くいかなかったので、新島大学にチップの調査を依頼したのだった。
彼以外にチップを持っていた従兄弟のレイクも一緒に調べられる事になり、医学部にそのためのプロジェクトが立ち上げられた。
彼はベッドに半身を起こして宙を眺め、しばらく耳を澄ました。しかしはっきりした人の声や物音などは聞こえてこなかった。
そこで彼はうんと体を伸ばして伸びをした。
この日はついに自分が刑務所から去る予定の日だった。
刑務所といっても、タケル自身が何か犯罪を起こして収監されていたのではなかった。彼はチップ除去の手術を受けるためにここに入院していたのだ。
その特異な手術が出来る医者というのが、タケルの父であるカンム・カジマだった。
現在カンムは中央刑務所の特別房にいる囚人で、終身刑を言い渡されながら恩赦を待つ身でもあった。
医者という職業の他に、反乱軍の司令官という肩書きを持っていた彼は、ハルカイリ島の反乱防止法のもとに逮捕され、中央刑務所に収監された。
しかし当時の反乱軍と政府の間には密約が交わされていた。ある実験の成果を無条件に譲渡する事で、カンムの身の保障が約束されたのだ。
実験は現在も進行中で、そのために政府は刑務所の中に特別房を作った。
その実験は、“人体冷凍実験”といわれるものだった。発案者エリオット・ユネスト医師が自ら被験者になり、カンムは実験全体を進める役をしていた。
一方、ハルカイリ本島を中心に活動していた当時の反乱軍は、冷凍実験に平行して数々の研究を行っていた。
政府の追求が厳しくなると、彼らはそんな研究のあらゆる実験データを超小型チップの中に隠した。
それが反乱軍関係者の子供の体に埋められて、隠蔽されたのが8年前だった。カンムを父に持つタケルは、まさにそのチップを埋め込まれた一人だったのだ。
タケルは自分に埋められたチップの事を何も教えられず、原因の分からない後遺症に悩まされながら青年期までを過ごした。
彼は医大に進学して、一時は自力で謎を解明しようとした。しかし上手くいかなかったので、新島大学にチップの調査を依頼したのだった。
彼以外にチップを持っていた従兄弟のレイクも一緒に調べられる事になり、医学部にそのためのプロジェクトが立ち上げられた。
更新日:2015-07-18 22:22:50