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ガラス越しの対面

 やがて一行は、予備検査室の横にある小部屋にたどりついた。
 隊員とユースとコメットは廊下に残り、タケルとツィーニャだけが部屋に入っていった。中には椅子が二脚用意され、部屋の壁にあるモニター画面とスピーカーで、外から指示ができるようになっていた。


 ユースは歩いていって、隣の予備検査室にいるレイクを覗いた。
 レイクは寝ていた寝台を上半身だけ上げられていて、長椅子に座ったような格好だった。
 部屋は小部屋と同じぐらい極端なほどの殺風景で、普段は使われていないらしい事が分かった。同じく壁にモニター画面がある他は、医療機器など何も置かれていなかった。
 ただ両方の部屋に共通していたのは、お互いを仕切る壁に大きな楕円形のガラス窓があることだった。
 それはコメットが説明したように、ただのガラスではなかった。マジックミラーになっていて、検査室の中から隣が覗けるようになっていたのだ。
 なぜそんな設備があるのか、どんな用途で使う予定だったのかは、ユースにも分からなかった。「防音室」と言われているその小部屋はただベッドがないだけで、他の独房と同じ造りのようにも思えた。



 検査室のレイクは真正面にガラスを向いていて、タケルとツィーニャが入ってくるのをじっと見ていた。
 その目が大きく見開かれ、拘束用のベルトの下の手がぎゅっと握られた。
 彼は実験を始めた時から既に、体をベッドに繋ぎ止められていたのだ。そのままベッドごと上体を上げた形だったので、誰かが支えなくても体がずり落ちなくて済んでいた。
 二人を見て、少年の呼吸が早くなった。

 ユースは廊下の内線を操作して、第四研究室を呼び出した。
 内線は検査室を出たすぐの壁にあったので、ドアの窓から中を覗きながら話をする事ができた。

 研究室にいる技師が、レイクの体の状態を報告した。
 少年は検査室から運ばれる前に、体内に新チップを入れられていた。それでここから少し離れた研究室へも、体内の状態がコンピューターに送られたのだ。
 このぐらいの距離であれば、特別な通信網を作らなくても、スーパーコンピューターでチップの信号を読み取る事が可能だった。

更新日:2015-08-08 10:36:50

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ORIGIN180E ハルカイリ島 収監編 1