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新しい研究室

 その頃、特別房に作られた新しい研究室では、新チップの実験の真っ最中だった。
 部屋にはユースとユネストと、コンピューター部屋から移ってきたほとんどの技師が集まっていた。
 それまでに一通り、チップの構造についての討論が終わった所だった。
 それでこの日は実際に、人体を使って効果を見る事になったのだ。その実験体にはおあつらえ向きの人物がいたので、早速実験は開始されていた。



 ユースはあれからどうなったかというと、ヘリでの外出から眠ったままの状態で刑務所に戻った。
 彼は元の独房に寝させられたのだが、時間を経て睡眠薬が切れたのか、ちゃんと朝になって目を覚ました。
 そして刑務所の医師や技師たちが起き出してくるよりずっと前に、彼はこの部屋へやってきた。もちろん仕事がしたいからとコメットに言って、隊員に鍵を開けて独房から出してもらったのだ。


 彼はコメットから、一日休んでいいと言われていた。しかしその言葉を聞かなかった。
 「大学ではこんなスケジュールは当たり前だったので、何も支障はない」と少年は説明した。逆に刑務所の規則正しい生活に切り替えるためには、朝早く出てきた方が、今夜ちゃんと眠れるからとも言い添えた。
 もちろんユース本人は、ユネストと一緒に研究が出来るなら、何時間だって起きているつもりだった。それにカンムが一晩中やっていたレイクの治療が、どんな結果になったかも気になっていたのだ。


 今回の実験体にはレイクを使うと、朝になってユネストとユースが決めた。コメットは何も言わずにそれを承知し、他の技師はその決定に従った。
 カンムは少年の手当てが終わり次第、さっさと自室かどこかへ引っ込んでしまった。そのため、彼にはこの実験の事は知らされていなかった。
 だが元々レイクについて伯父は何一つ関心を示さなかったので、彼に言う必要はないとユネストが言った。




 程なくユースたちは実験を開始した。
 レイクは輸血を終え、体中の深い傷に縫合を施された状態だった。そして「検査室」と呼ばれる医療ブースの一室に寝かされていた。
 そこから診療ベッドごと、少年は研究室まで運ばれてきた。

更新日:2015-09-06 18:01:20

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ORIGIN180E ハルカイリ島 収監編 1