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八月 工藤一家の二年目の夏休み Part 3

ほんのつかの間の安らぎ────

志保は子供たちから解放され、ひとりテントの中で医学書を読みふける。

燦々と降り注ぐ真夏の太陽を浴びるのは嫌だったが、
たまには都会の喧噪から離れて、ビーチでのんびり過ごすのも悪くはない。

けれど、そんな優雅な時間も決して長くは続かなかった。

「ママぁーーーーーー、のどかわいたぁ! ジュース!」

自分を呼ぶ我が子の甲高い声に、志保が医学書から顔を上げて前方を見れば、
コナンがテントめがけて全速力で駆けってくる。

「ダメよ、コナン! テントに入る前にタオルで身体を拭いてからよ」

志保は急いでテントの外に出ると、
バスタオルを大きく広げてコナンを待ち構えた。

そうして、コナンは志保を押し倒しそうになるほどの勢いで、
タオルの中に飛び込んだ。

「ママ! ぼくね、うみでおよげたぁ!」

「あら、コナン……すごいわね」

志保の顔を見上げながら、嬉しそうに報告するコナンの、
海水と砂まみれの身体を丁寧に拭いてやる。

それから、コナンと一緒にいたはずの男の姿を探して辺りを見渡せば、
志保の目と鼻の先で色黒の男がビキニ姿のギャルたちに囲まれて、
ニヤケた顔で談笑していた──。

(まったく、何やってるのかしら?  男ってどうしようもないわね。
若い女の子見るとすぐこれだもの……服部君も新一と変わらないわね)

更新日:2016-10-02 13:31:44

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未熟なふたり ~ 帰ってきた羊たち 【コナンで新一×志保】