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確かに、工藤家が以前から所有している別荘は高い木立に囲まれていて、
周りはとても静かな環境で工藤優作の執筆活動には最適だった。

しかし、子供達には少々退屈なようで昨年も海へ行きたいと騒いでいたのだ。

新一が学生の頃は両親たちに経済的な援助もしてもらっていたが、
さすがに日本へ帰ってきてからは金銭的な支援は遠慮していた。

探偵というのは常に安定した収入があるわけではない。

けれども、家族を養えるだけの十分な稼ぎはあるし、
時折、高額の報酬を得ることだってある。

それに志保も自らの研究がアメリカでいくつかの特許を取得しており、
かなりの収入が入ってくるので金銭的には余裕があった。

それでもなお、彼らは『孫たちのために』という大義名分で何かと援助してくれるのだ。

というのも、新一の両親はどんなに贅沢しても将来あまりあるほどの資産を保有していた。


「ねえちゃん、家族水入らずで旅行中に悪いんやけど……
俺もお邪魔させてもらってもええか?」

服部が志保に向かってニッと笑って見せる。

「あら、遠慮なんかしないでよ。アイリもコナンも賑やかな方が喜ぶわ。
でも、ほんと、服部君、お久しぶりね」

「せやな、ねえちゃんと会うのは一年ぶりやな」

昨年も今頃、やっぱり夏休みが取れたからと服部が工藤邸を訪ねてきたのだ。

志保が服部に会うのはそれ以来だった。

新一の方は探偵として関西方面の仕事を請け負うこともあるので、
たびたび会っているようだったが……。

何しろ、服部平次は京都の大学を卒業後、警察学校に入って交番勤務を経ると、
昨年から刑事となって忙しい日々を送っていた。

服部は父親の服部平蔵とは別の道、あえて出世コースを捨て、
ノンキャリアで足を棒にして事件の捜査にあたる道を選んだのだ。

服部いわく、将来は探偵業に戻るつもりでいるらしいが、
現在は京都府警の捜査一課にいる。

今は多忙を極める服部も、大学生だった頃は新一や志保たちに会いに、
何度もLAまで遊びに来てくれたりもした。

更新日:2016-10-02 13:32:48

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未熟なふたり ~ 帰ってきた羊たち 【コナンで新一×志保】