• 52 / 101 ページ
志保が新一の立ててくれたテント内を覗きながら、
「やっぱりこのテントにして良かったわね」
と広々とした空間に満足気に呟くと、テントの真ん中に腰を降ろす。

新一も志保の隣に座ると、「ありがと、ご苦労様」という志保の言葉に頷いて、
軽く唇を重ね合わせた。

「で、何してたんだよ」

「子供たちに冷たい物を買ってやったのよ。はい、貴方にはこれね」

志保が新一の目の前に紙カップを差し出す。

「あんだよ、これ?」

「チョコアイスよ」

「見りゃ、わかるけどよ……俺、こんなもん食いたくねぇーよ。
つーか、ほとんど溶けてっぞ」

カップに入ったアイスクリームは丸い山の形が崩れてドロドロとしている。
買ってからだいぶ時間がたったのと強い日差しで溶けだしていた。

「パパ、チョコアイシュ、すき!」

「は?」

コナンが志保の手からアイスのカップを奪うと、
新一にスプーンで掬って溶けたアイスを食べさせようとする。

志保も思わず苦笑した。

「貴方、ひと口、食べてやってよ。
コナンが貴方のためにって買ったのよ」

そうなのだ。

売店の前まで来ると、コナンは店員に向かって……
「パパにチョコアイシュくだしゃい!」と勝手に注文していたのだ。

なんとなく事情を察した新一は大きく口を開けると、
コナンがドロドロのアイスを放り込む。

(ウウッ、あめぇーなぁ……)

「パパ、おいちぃ?」

「ああ、すげぇ甘くてうまいな。サンキュ、コナン」

息子の頭を撫でてやりながら……

「残りはコナンが食っていいぞ」

コナンもパパを真似て嬉しそうに溶けかけたチョコアイスを口に含んだ。

「あまくておいちぃ!」

子供は甘いものが大好きだ。

溶けたアイスを必死にスプーンで掬おうと奮闘する我が子を微笑ましく見守る一方で、
この後、チョコアイスで顔中、いや全身ベトベトになるだろうコナンの姿が頭を過り、
新一も志保もほんの少しだけ顔をしかめた。

更新日:2016-08-15 23:19:05

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

未熟なふたり ~ 帰ってきた羊たち 【コナンで新一×志保】