「ただいま！」

工藤新一が午後八時を過ぎてようやく帰宅すると、
アイリとコナンの二人の子供たちが新一を元気な声で出迎えてくれる。

「おかえり、パパ！」
「パパァーーーー！」

パパの帰宅が嬉しくてすぐに子供たちが新一の身体にまとわりついてくる。

新一は二人の子供たちを順番に抱きあげて「ただいま」の挨拶をすると、
いつもは子供二人と一緒に必ず出迎えてくれるはずの志保の姿がないのに気づく。

「あれ、志保がいねー。アイリ、ママはどうした？」

「ママはね、おミミ作ってるんだよ」

「おミミ？　なんだ、それ？」

とりあえず子供たちと一緒にリビングへと入っていく。

夏休みの改装工事で工藤邸のリビングはとても広々とした空間に変わり、
リビング、ダイニング、キッチンが一体化したオープンなスペースになっている。

おかげで子供二人が毎日リビングを庭と同じように走り回って賑やかだ。

志保はリビングのロングソファに座って何やら手に持って必死に裁縫をしていた。

「志保、ただいま」

「あら、おかえりなさい」

新一は志保の隣に腰掛けると、彼女の唇にチュッとただいまのキスをする。

よほどの大喧嘩でもしない限り、いってきますとただいまのキスを忘れることはない。
これはアメリカにいた頃からのすでに習慣になっている。