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「あれから、もうすぐ六年か……」

新一が懐かしそうに志保の肩を抱き寄せながら、そう呟く。

ここは阿笠邸の志保の部屋。
今は隣から持ち込んだ荷物で足の踏み場もないほどだが、
志保が使っていたベッドは以前のまま。
LAへ旅立つ直前までこのベッドで二人で眠っていた。

狭いベッドで肩を寄せ合い、毎晩、眠くなるまで語りあった。
生まれてくる子や二人の未来について……。

そんな思い出が詰まったベッドに今夜は二人で横になる。

今朝、子供たちは阿笠博士の運転するミニバンで、
工藤夫妻と一緒に別荘へと出かけて行った。

何年かぶりに二人だけで過ごす夜、当時の思い出話に花が咲く。

「貴方、毎晩、ベランダからコソ泥のように入ってきたわよね」

志保はあの頃を思い出してクスクスと笑い出す。

「おいおい、コソ泥って……志保、その言い方は止めろよな。
コソ泥と言ったら、怪盗キッドみたいじゃねーか……。
せっかくのいい思い出が台無しになるだろう」

「あら、怪盗キッドはコソ泥じゃなくて大怪盗だったわよ。
結局、服部君もキッドを捕まえられなかったんでしょう?」

「あいつ、『俺に任せとけや!』と散々デカいこと言っておいてさ……
『工藤、あかんかったわ。キッドが消えてもうた』って情けない声を出して、
アメリカまで電話してきたからな」

怪盗キッドは数年前、ある日忽然と世間から姿を消してしまった。
新一はLAで暮らしている間も怪盗キッドに関するニュースや情報は、
逐一ネットで収集していた。

「いったい怪盗キッドってどこへ消えたのかしら?」

「さあな、意外と俺らが住んでる近くにいたりしてな」

「なんでそう思うのよ」

「うん? ただの探偵の勘さ」

「ふーん、そう……」

新一が全く根拠もなくそんな発言をするはずがないことを志保はよく知っている。

ただそれほど興味があることでもないし、新一が話す気はなさそうなので軽く受け流した。

更新日:2017-12-08 17:59:55

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未熟なふたり ~ 帰ってきた羊たち 【コナンで新一×志保】