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星に願いを

駐車場からエントランスに向かう途中で
少女に声をかけられた


「髪の毛 きれいだね」



「ん?そうか?サンキュ」



答えると隣にいた少年が驚いた顔で言った



「日本語しゃべった」



「え?」
意外な反応に思わず笑ってしまう



「日本人だからな」



「え~?!」



夏祭りの帰りなのか浴衣姿の小さなカップルが
今度は二人一緒に驚きの声をあげる



「日本人じゃないでしょ テレビで見た事ある
外国のモデルさんでしょ」



決め付けた女の子の得意げな顔が可愛らしい



「そうだな 外国人でもある かな」



「やっぱりそうなんだ お兄ちゃんカッコいいもん」



言った少女をちらりと見た少年が俺をにらみつけてくる



ああ そういう事ね



「そうか?ありがとな
でもお兄ちゃん恋人いるからつきあってやれないぞ」



ウインクすると少年は、ほっとしたように表情をゆるめた



「恋人いるんだ」



ちょっとがっかりしたように女の子が問いかけてくる



「あぁ、ここに住んでるヴァイオリンの先生なんだ
七夕だから外国から逢いに来た」



「えぇ~?そうなの?」



驚く二人にようやく追いついてきた母親らしき女性が
声をかける



「二人とも待っててって言ったのに」



そして俺にぺこりと頭を下げた



「すみません、何か失礼な事言ったんじゃ」



「いえ、全然
可愛らしいですね二人とも」



微笑むと彼女の頬が染まる



「ママだめだぞ、この人恋人いるんだから」



少年の言葉にお互いに顔を見合わせて
笑ってしまった。



「ほら翔吾 お土産忘れてるでしょ」



「あ・・・」



少年と母親とのやり取りを見て
ふと思い出した。



まずい、俺も忘れ物・・・



逢いたい気持ちが逸って
折角のプレゼントを車内に忘れて来てしまった



「お兄ちゃんも忘れものだ それじゃここでな」
可愛いカップルに手を振って母親に会釈して
車の方にとって返す

更新日:2015-07-08 09:01:49

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