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とんだ、たぬきじじいです。

 想像もつかない事と言えば。

 あるお休みの日の朝の事。
主人がじいちゃんを起こしに部屋へ行きますと、布団ではなくコタツで寝ていました。
夜中に目が覚めて、トイレへ行くなりのうろつきの後、間違ってコタツの方に入ってしまったのでしょう。
真冬のコタツ。スイッチも入っていなく、体が冷え切っていました。
「じいちゃん。布団で寝ぇや。寒いやろ」
いくら声を掛けても反応がありません。 起きないどころか、ピクリとも動きません。
仕方なく引きずるように布団に寝かせましたが、 呼吸は安定しているものの、依然反応がなく、寝かせたままの姿勢で固まっています。
熱と血圧を測り、正常でしたが、あまりにも反応がなく心配でしたので、近くの消防署に電話をして状態を説明し、緊急な状態なのか相談しました。
「もう暫く様子を見て、変わらないようなら、救急車の出動を要請して下さい」
との返答を受け、30分位様子を見ましたが、未だ眠ったままで、足を曲げれば曲げたまま、腕を曲げれば曲げたまま、自分で動かすと言う反応は一切ありません。
脳や心臓に異常があっては大変です。救急車に来てもらいました。

さ~近所は大騒ぎです。隣から親戚のおばちゃんがとんできてくれて
「いや~昨日まで元気やったのになぁ~」
と言った時には、(えっ?!そんな重大な状態なん?!)と、急に不安になりました。
ストレッチャーに乗せる時も全く起きる様子なく、色んな声掛けにも 一切反応ありません。
救急車には、私が一緒に乗る事になりましたが、アルツハイマーであるが故に受け入れの病院がなかなか見つかりません。
あちこちに受け入れを断られている間も救急隊員の方が、血圧・心電図・血中酸素濃度を計測して下さっていました。
しかし、見事なまでに総て正常。
(おや!?まさか!?)
私の中で違う不安が生まれました。
「心臓や脳に何らかの異常があれば、数字に出てくるんですが・・」
と,救急隊員の方が不思議がるのを見て、思わず口をついた私の言葉は・・・
「まるで眠っているみたいですね」
 
 もしかして・・たぬき寝入りか!?

一つの疑念が、私の中で大きくなっていきました。
そして・・・
ピーポーピーポー!!
じいちゃんの為に一生懸命して下さる方々を前に
(どうか・・緊急な事態でありますように)
と祈ってしまいました。
ひどい嫁だとお思いでしょうが、こんなにしてもらって、たぬき寝入りでしたとは、とても言えません。

 病院に到着してすぐに、脳のCTを撮って下さいました。
残念ながら・・・と言うかなんと言うか異常なしで、依然として、目を覚まさない理由は判りません。
そして「点滴をしてもこの状態なら入院しましょう」との事で、処置室のベッドで点滴をしてもらう事になりました。
2時間程かかるので、交代でみようという事で、私が付いている時の事です。静かに寝ているじいちゃんの顔をぼーっと見ていますと・・・。

 パチッ!!

あれ??今、じいちゃん目開いたよな!?
今、チラッとこっち見たよな!?
「じいちゃん!起きたん?もしもし?」
しかし、また反応無しです。ピクリとも動きません。
(絶対たぬき寝入りやわぁ。ええ加減にせえよ。今、目開いたやろうが!)
そんな事をこっそり思いながら、仕方なく黙ってそばにいますと、しばらくして、急に 「おしっこ!」と言いながら起き上がったのです(ー_ー)!
はぁ~!?こんだけ大騒ぎさせて、第一声が「おしっこ!」やと!?
ほんまに!このたぬきじじいが!!

 数日後、精神科を受診し主治医にこの日の事を相談しますと
「脳の萎縮で睡眠と覚醒の境目が曖昧になっているのかな」
ですって。
先生、それは違うと思います。あれはたぬき寝入りです!
紛れもなく現実逃避です。

 その後、そんなたぬき寝入りが何度か起こりました。昼間にデイサービス先でやらかした事もあります。

とんだ、たぬきじじいです。

そんなたぬきじじいぶりも、じいちゃんの意志に関係なく、病気がさせている事なのでしょうが、私達としては、情けないと言うか、何と言うか。
そんな気持ちは誰にも理解されず、主治医にも
「脳の萎縮で睡眠と覚醒の境目が曖昧になっているのかな」
と、呑気としか思えないような答えをもらって。
途方に暮れる日々でした。

とりあえず、命に別状なくて良かった。
呑気なくらいでちょうど良いって事なのか。
そんなくらいでアタフタしていたら、この先やっていけませんよって事なのか。

ほんとに、そう!序の口でした。

更新日:2015-08-31 16:46:56

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