• 1 / 8 ページ

消えた鍵

つい先日、9月8日のことですが、ちょっと不思議な出来事が
ありました。

端からすればたいしたことではないのでしょうが、私にとって、
それは、科学では説明のつかないこと…のような気がしてなり
ませんでした。

はたして、私は、その日の行動予定を変更することにしました。

その日の行動予定とは、社用車で公用外出する道すがら、
私用を済ませることでした。

その日は朝からどんよりして、昼近くから雨が降りだしました。

私は、「外出して、用が済むまでは降らないでほしい…」と願っ
ていたのですが、意に反して、ぽつぽつと雨が落ちてきました。

デスクのPCで気象レーダーを見ると、時間を追うごとにます
ます降ってきそうな気配です。

公用はもとより、私用のほうは、できればお昼前後、最悪でも
日没までには済ませたいと考えていました。

「あぁ、ヤバいな、これ以上降ってこないうちに出かけると
するか…」

私はそう思って、オフィスの女性に外出する旨を伝え、社用車の
鍵が掛かっているボードに目を遣りました。

「あれっ!? 鍵がない…」

そのボードに鍵が掛かっていれば、目的の社用車は出払っていな
い…ということなのです。

私は、つい今しがた、いつも利用する社用車が駐車場に置かれて
いるのを視認してきたばかりでした。

私 「お~い、誰か社用車の鍵をポケットにしまってないか?」

はたして、誰も鍵の戻し忘れはないようでした。

今の勤務に替わってから1年半経ちましたが、こんな、クルマの
鍵が行方不明になるなんてことは一度もありませんでした。

そうしたら、

社員 「あっ、もしかしたら、今朝夜勤明けであがったTさんが
犯人かも…。ゆうべ、その車を使ったそうです」

私 「おい、誰かTに電話して確認してくれ」

しかし、Tさんは、夜勤明けはパチンコ屋に寄ってから帰ること
が多々あり、案の定、何度コールしても繋がりませんでした。

私 「しょうがねえな…、ほかの社用車出すか…、いや、待て
よ…銀行にも寄らなきゃならないしな。あそこのパーキングは
狭いし、ぶつけてもぶつけられてもイヤだしな…」

思案がてら、外に出てみると、雨はさきほどより強くなってきて
いました。

私は、煙を吐きながら、「もしや…」と思いました。

そして、声には出さず、
「そうか…、無理してまでこなくていいよ…、ってことか?
わかったよ…」そう思いました。

そうして、今度は
「じゃ、また来年…な…」そう、小さく呟きました。

私は、出掛けるのを中止して、通常業務に戻りました。

私の仕事は主にデスクワークで、会社のさまざまなデータを
纏めて上層部へ提出したり、少額現金の出納を担当しているの
です。

「こんなことは、初めてだな…。夜はヤバいというから昼間
出かける途中に寄ろうと思ったんだがなぁ」

私は、ぶつぶつ言いながら、昔のことを思い出してみました。

ただ、あらためて昔のことを思い出そうとしても、数十年の
間に、さまざまな記憶は曖昧になり、風化し始めていました。

更新日:2015-07-08 16:55:24

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook