• 8 / 11 ページ

 いつでも待っていよう。お前は面白そうだからな。

 そんな別れの挨拶を交わして、俺はその足で先輩の元へと向かうことにした。飛ばされた地方がどこかは聞いていた。どうせ有給はまとめて使ってる。行き帰りをみて2日かけたって何の問題もない。

 俺は先輩に連絡を取って、電車に乗り込んだ。

 指定された駅前で仕事終わりの先輩と再会した俺は驚いた。先輩は前より楽しそうな、充実してるような雰囲気だった。

 最近発見して気に入ったんだと言われて案内された飲み屋で、俺は日中の事を正直に話した。衝動で自殺の名所を探して行ったこと。そこで完成度の高い天使のコスプレをした残念な美人と会ったこと。その妙な口調と語り口、雰囲気にやられて自殺を諦めてここに来たこと。

「突然どうしたのかと思ったらそんな事があったのか」

「なんか疲れました……」

「その疲れのまま死ぬんじゃないぞー?」

 笑い飛ばされて、俺も死にたい気は失せましたと苦笑を返す。

 と、先輩は笑いを落ち着けて話を戻した。

「それはそうと、その名所の話、どっかで聞いたことある気がするんだよな……」

「え、まさか先輩も行ったことが」

「ない」

「そんな即答しなくても……」

「ははは。んー、なんだったかなあ……ネットの掲示板だったかテレビだったか……」

 なんだって? 全然隠れてねえじゃん。いや、ネットのサイトで見れたくらいだから元から隠れてないか。隠れてないな。うわ…そこから騙されてる俺って。

 冷静になればあれこれ気付くものだ。衝動の余裕のなさってすごい。

「そうそう掲示板だ! でも心霊スポット的な掲示板だった!」

「心霊スポットって…。まさかあのコスプレの人が幽霊でしたなんて話じゃ……」

「近いかもしれないな……」

 そこは遠くあってほしいところです。

 先輩はうーんうーんとうなりながら携帯を取り出した。俺はすかさず口をはさむ。

「まだスマホにしてないんですか」

「前時代万歳」

 お決まりの返しだった。それに嬉しくなりながら、俺は自分のスマホを取り出した。

「画面でかいし文字も見やすいからこっちで調べますよ」

 俺は先輩に言われた言葉を打ち込み、検索をかけた。


更新日:2019-10-31 11:20:04

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook