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そんなはずなかった!

 知らない家の扉を自分の家のように開けたお母さんが

「ごめんやで。みゆきが言う事聞かへんねん」

と言いながら、勝手に中へ入って行くのが見えた。

私もみゆきに抱っこされて家の中に入ると

「かまへんよ。みゆき、おかえり」

と、優しそうなおばあちゃんが、右手でみゆきの頭を、

左手で私の頭を撫でた。 

「ジミーだけ家に置いとくの可愛そうや言うて、泣いて泣いてなー。もう、電車に乗せるの大変やったわ」

お母さんが愚痴るように言った。

そうだったのか。私はてっきり、また捨てられるのかと思って・・・。

よく考えてみれば、捨てられるなんて、そんなはずないんだ。

自分の食べる分を少しずつ私に分けてくれる家族。

傷だらけになりながらも、降りられなくなった木から助けてくれるお兄ちゃん。

寒い日には、布団を開けて「どうぞ」と入れてくれるみゆき。

「お風呂できれいに洗ってくれるお母さん。

「行ってきます」と、頭を撫でてくれるお兄ちゃん。

「ただいま」と、のどを撫でてくれるみゆき。

私は、いつも愛を感じていたのに、捨てられるはずがないんだ。

安心したら、急に眠たくなって、みゆきの足にくっついて眠った。


 帰りの駅で大変な事が起きた。

電車を降りて改札を通ろうとすると

「ちょっとすみません。猫を連れておられますね」

と駅員さんに呼び止められた。

「動物は大人運賃の3倍いただきます」

駅員さんの言葉を聞きながら、

小銭入れをゴソゴソ探すお母さん。

次の瞬間、

「ごめんなさい!!」

叫んだかと思うと、お母さんはみゆきの腕を掴んで、全速力で走りだした。

この家は本当に貧乏なんだな~。

これからは「ごはんちょうだい!」とズボンをガリガリ掻いておねだりするのは止めようと思った。

更新日:2015-06-29 23:36:44

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