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また捨てられるの?

みゆきが泣きながら叫んでいる。

「いらん!ジミーかわいそうやん!」

きっと、もう私を飼う事に限界がきたのだ。

あの冷たい雨を、久しぶりに思い出した。

大事に育ててくれたこの家にも、何か事情があるのだろう。

「泣かないで」

私は、みゆきの体に自分の体を摺り寄せて、みゆきのぬくもりを確かめた。

 

  やっぱり、何処かへ出かけるようだ。

お母さんは大きめの鞄を提げている。

私は、赤く目を腫らせたみゆきにだっこされて、家を出た。

相変わらずの古く汚い長屋は、いつしか私にとっての居心地の良い我が家になっていた。

隣の家の物音に驚いて目を覚ましてしまうような、薄い壁で仕切られた長屋は、何処にいても誰かの声とあたたかさを感じられた。

みゆきの腕の中で、どんどん離れていく私の“庭”を見ながら、ねずみを捕って帰ってお母さんに叱られた事や、木に登って降りられなくなり、みゆきが助けに来てくれるまで泣いていた事を思い出していた。

 随分歩いて駅に着いた。電車に乗って遠くまで行くようだ。

電車の人に見つからないように、タオルに包まれた私は勤めて大人しくした。

もう、探しても見つけられないくらい、あの長屋から遠い所まできた。

知らない駅に降りると、みゆきは私を腕から離し、

「かしこかったな~ジミー。おしっこしぃ」

と言った。

用を足し、どうすればいいのか解らずじっとしている私を抱き上げたみゆきは

「さぁ行こうか」

と、お母さんの後を追って歩き始めた。

更新日:2015-06-29 23:35:56

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