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未だに混乱しまくっているフローラと、のほほんとしているマリウスの中に、突然ノックの音が聞こえてきた。
「なーにー?」
「失礼致します。お茶とお菓子をお持ち致しました。」
と先程の支配人の声。
「あー、どうぞ入ってー。」
マリウスの声に、扉が静かに開いて、お茶とお菓子を乗せたワゴンを押して支配人が姿を現した。
そして先ずはテーブルの上、…マリウスが散々食べ散らかしたと思われるお茶とお菓子の残骸、をささっ、と手際よく片付け、新たに持ってきたカップとお菓子の皿やフォーク等を二人分綺麗に並べ、そしてポットから丁寧に、空のカップに良い薫りのする紅茶を注いでいった。
「では、ごゆっくりどうぞ。」
一仕事終えた支配人は一言告げて、また静かにワゴンを押して部屋を出ていった。
「おー、今度はチョコムースがある。ここのは絶品なんだよなー♪」
嬉々としてマリウスは椅子に座り、早速フォークを持って沢山並べられたケーキのひとつをぶすり、と刺した。
そしてケーキを丸ごと持ち上げてあんぐり、と口を開けたところで動きを止めた。
「ねえ、君も座ってケーキ食べたら?ここのケーキは本当に美味しいよ。」
「……。」
だが、マリウスの勧めにも、フローラは固まったまま反応しなかった。
…何なの、この人…、
「ねえ、君、聞こえてるぅ?」
先程よりも大きな声で呼ばれて、やっとフローラは我に帰った。
「…あ、はい…。」
そして半ば虚ろな状態でふらふらと椅子に座って、向かい合うマリウスを見つめた。
…うん、ソッコー断ろう。絶対に断る。何が何でも、どんな手段を使ってでも、この見合い、絶っっ対!にぶち壊してみせる!!
フローラは大口開けてケーキを一口で食べるマリウスを見て、そう硬く決意した。
目の前にいるマリウスは、フローラの存在を忘れたように無言でひたすら前にあるケーキの山をぱくぱくと食べていたが、半分ほど食べた頃にふう、と息をついて紅茶に手を伸ばした。
「あー、お腹いっぱい。ん?君、まだケーキ食べてないじゃない。もしかしてケーキ嫌いなの?」
どうやって上手いこと見合いを断ろうかと考えていたフローラに、マリウスが不思議そうに首を傾げて尋ねてきた。
「あ、いや、…ち、ちょっと…。」
「もしかしてダイエット中?でも、君みたいな可愛い娘がダイエットする必要なんて無いと思うんだけどなあ〜。」
いえ、そうではありません。
貴方のその下品な食べ方に胸焼けしているだけですから…。
なんて事は当然言えない。
それに、私ダイエットしてまで綺麗になる必要ありませんから。
綺麗になったところで何にもならない。
誰も、見てくれる男性なんて居ないんだし、欲しいとも思わないし…。
あの時、かつての婚約者から見事にあっさりと棄てられた時からフローラは男性と一緒に人生を歩むという幸せを捨てた。結婚という夢を捨てた。
…所詮、男なんて…。
「なーにー?」
「失礼致します。お茶とお菓子をお持ち致しました。」
と先程の支配人の声。
「あー、どうぞ入ってー。」
マリウスの声に、扉が静かに開いて、お茶とお菓子を乗せたワゴンを押して支配人が姿を現した。
そして先ずはテーブルの上、…マリウスが散々食べ散らかしたと思われるお茶とお菓子の残骸、をささっ、と手際よく片付け、新たに持ってきたカップとお菓子の皿やフォーク等を二人分綺麗に並べ、そしてポットから丁寧に、空のカップに良い薫りのする紅茶を注いでいった。
「では、ごゆっくりどうぞ。」
一仕事終えた支配人は一言告げて、また静かにワゴンを押して部屋を出ていった。
「おー、今度はチョコムースがある。ここのは絶品なんだよなー♪」
嬉々としてマリウスは椅子に座り、早速フォークを持って沢山並べられたケーキのひとつをぶすり、と刺した。
そしてケーキを丸ごと持ち上げてあんぐり、と口を開けたところで動きを止めた。
「ねえ、君も座ってケーキ食べたら?ここのケーキは本当に美味しいよ。」
「……。」
だが、マリウスの勧めにも、フローラは固まったまま反応しなかった。
…何なの、この人…、
「ねえ、君、聞こえてるぅ?」
先程よりも大きな声で呼ばれて、やっとフローラは我に帰った。
「…あ、はい…。」
そして半ば虚ろな状態でふらふらと椅子に座って、向かい合うマリウスを見つめた。
…うん、ソッコー断ろう。絶対に断る。何が何でも、どんな手段を使ってでも、この見合い、絶っっ対!にぶち壊してみせる!!
フローラは大口開けてケーキを一口で食べるマリウスを見て、そう硬く決意した。
目の前にいるマリウスは、フローラの存在を忘れたように無言でひたすら前にあるケーキの山をぱくぱくと食べていたが、半分ほど食べた頃にふう、と息をついて紅茶に手を伸ばした。
「あー、お腹いっぱい。ん?君、まだケーキ食べてないじゃない。もしかしてケーキ嫌いなの?」
どうやって上手いこと見合いを断ろうかと考えていたフローラに、マリウスが不思議そうに首を傾げて尋ねてきた。
「あ、いや、…ち、ちょっと…。」
「もしかしてダイエット中?でも、君みたいな可愛い娘がダイエットする必要なんて無いと思うんだけどなあ〜。」
いえ、そうではありません。
貴方のその下品な食べ方に胸焼けしているだけですから…。
なんて事は当然言えない。
それに、私ダイエットしてまで綺麗になる必要ありませんから。
綺麗になったところで何にもならない。
誰も、見てくれる男性なんて居ないんだし、欲しいとも思わないし…。
あの時、かつての婚約者から見事にあっさりと棄てられた時からフローラは男性と一緒に人生を歩むという幸せを捨てた。結婚という夢を捨てた。
…所詮、男なんて…。
更新日:2015-07-14 08:09:55