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さん
フローラの目の前にいる、恐らくはマリウス=ブランディア、とおぼしきその男性の姿、
…長身でちょっと細身の身体に象牙色の、綺麗な光沢のある絹の上着を纏い、腰には宝石を施した留め具のついた飴色に輝く革のベルトをつけ、綺麗な装飾を施した飾り用の細身の剣を差し、細い黒のズボン姿に同じく黒の革靴を履き、見た目正にどこぞの国の王子様なのっ!というような風貌、であった。
そう、首から下『だけ』は…。
「……。」
だが、首から上のその容姿、
それは、肩近くまでぼうぼうに伸びきった、もじゃもじゃに縺れて屑が絡まっている汚いくすんだ黒髪に、ワインの瓶底以上に分厚いレンズをした、これまた冴えないデザインの、ぶっとい黒縁の眼鏡をかけ、
そして、先程までテーブルの上に準備されてたお菓子を食べていたらしく、お菓子のかすが口の周りを中心に顔じゅうの至るところにこびりついた姿…。
「………。」
首から上と下との、余りのそのギャップの差に、フローラはただただ絶句していた。
…何、この人物、
これがあの高位官僚一族のブランディア家のひとり、なの?
この目の前の、綺麗なおべべを身に着けただけの、超絶にダサくて礼儀もマナーもなってない様な奴が、本当にあのマリウス様なの?!
…いや、これは嘘だ、夢だ、悪夢だ…。
「案内ご苦労さーん、ああ、彼女のお茶とお菓子、あと僕の分のお茶とお菓子のおかわりも持ってきてくれるぅ?」
だがマリウスらしい人物は、にこにこしながら口の周りをぺろぺろ舌で舐め、遠慮無く自らの袖口で拭いながら、支配人に飄々と命じた。
「…かしこまりました。」
支配人はこのような事にも動じること無く平然と返事をすると一礼し、部屋から出ていって扉を閉めてしまい、部屋にはフローラとマリウス?、の二人きりになってしまった…。
「…………。」
唖然としたまま突っ立っていたフローラに、やっとマリウス?!らしい人物がふと視線を向けてきた。
「ふーん、君がフローラちゃんかい?」
そしてフローラを上から下まで、舐め回すようにじろじろ見回していった。
「…は、はあ…。」
…フローラ、ちゃん…!?
余りに露骨なその行動に、フローラは思わず身体に悪寒が走ってしまった。
「おー、どんな女の子かと思ってたけど、意外と可愛いじゃなーい。僕、らっきー♪」
にこにこと笑顔を浮かべながら、だけど初対面のフローラに余りにも馴れ馴れしくマリウス?!は話し掛けてきた。
…何、何これ?
今までお客様や取引先の方々とか、いろいろなタイプの男性見てきたけど…、
ここまで汚くてダサくて失礼で変な奴、見たこと無いわよっ…!!
「あ、あの…、貴方、本当にブランディア家のマリウス、様、ですか…?」
…未だに信じられないといった様子でフローラは動揺しまくっていたが、それでも端から聞いたら大変失礼な、だけど当然な一言を何とか絞り出した。
「ん?そうだよ。他に何に見えるかい?」
「……。」
…これが、これがマリウス様…、
正直言って余りに、…いやはっきり言ってダサっ!キモいっ!!
こんな成りじゃあ、身分や地位がどうであれ、絶対嫌だ。
…長身でちょっと細身の身体に象牙色の、綺麗な光沢のある絹の上着を纏い、腰には宝石を施した留め具のついた飴色に輝く革のベルトをつけ、綺麗な装飾を施した飾り用の細身の剣を差し、細い黒のズボン姿に同じく黒の革靴を履き、見た目正にどこぞの国の王子様なのっ!というような風貌、であった。
そう、首から下『だけ』は…。
「……。」
だが、首から上のその容姿、
それは、肩近くまでぼうぼうに伸びきった、もじゃもじゃに縺れて屑が絡まっている汚いくすんだ黒髪に、ワインの瓶底以上に分厚いレンズをした、これまた冴えないデザインの、ぶっとい黒縁の眼鏡をかけ、
そして、先程までテーブルの上に準備されてたお菓子を食べていたらしく、お菓子のかすが口の周りを中心に顔じゅうの至るところにこびりついた姿…。
「………。」
首から上と下との、余りのそのギャップの差に、フローラはただただ絶句していた。
…何、この人物、
これがあの高位官僚一族のブランディア家のひとり、なの?
この目の前の、綺麗なおべべを身に着けただけの、超絶にダサくて礼儀もマナーもなってない様な奴が、本当にあのマリウス様なの?!
…いや、これは嘘だ、夢だ、悪夢だ…。
「案内ご苦労さーん、ああ、彼女のお茶とお菓子、あと僕の分のお茶とお菓子のおかわりも持ってきてくれるぅ?」
だがマリウスらしい人物は、にこにこしながら口の周りをぺろぺろ舌で舐め、遠慮無く自らの袖口で拭いながら、支配人に飄々と命じた。
「…かしこまりました。」
支配人はこのような事にも動じること無く平然と返事をすると一礼し、部屋から出ていって扉を閉めてしまい、部屋にはフローラとマリウス?、の二人きりになってしまった…。
「…………。」
唖然としたまま突っ立っていたフローラに、やっとマリウス?!らしい人物がふと視線を向けてきた。
「ふーん、君がフローラちゃんかい?」
そしてフローラを上から下まで、舐め回すようにじろじろ見回していった。
「…は、はあ…。」
…フローラ、ちゃん…!?
余りに露骨なその行動に、フローラは思わず身体に悪寒が走ってしまった。
「おー、どんな女の子かと思ってたけど、意外と可愛いじゃなーい。僕、らっきー♪」
にこにこと笑顔を浮かべながら、だけど初対面のフローラに余りにも馴れ馴れしくマリウス?!は話し掛けてきた。
…何、何これ?
今までお客様や取引先の方々とか、いろいろなタイプの男性見てきたけど…、
ここまで汚くてダサくて失礼で変な奴、見たこと無いわよっ…!!
「あ、あの…、貴方、本当にブランディア家のマリウス、様、ですか…?」
…未だに信じられないといった様子でフローラは動揺しまくっていたが、それでも端から聞いたら大変失礼な、だけど当然な一言を何とか絞り出した。
「ん?そうだよ。他に何に見えるかい?」
「……。」
…これが、これがマリウス様…、
正直言って余りに、…いやはっきり言ってダサっ!キモいっ!!
こんな成りじゃあ、身分や地位がどうであれ、絶対嫌だ。
更新日:2015-07-10 11:57:56