官能小説

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あれから3日後、

フローラは約束通り、婦人が用意してくれた上質な絹でできた紺色のドレスに身をつつみ、唯一持ってる宝石の、母親の形見のパールのネックレスをつけ、そして近所の髪結いのおばあに頼んで先ずは化粧を綺麗に施してもらい、艶のある長い黒髪をぐっとアップにしてもらい、所々に花の形の髪留めをあしらってもらっていた。

「ほい出来たよ!こりゃ何処のお嬢様になったんじゃ!て位に仕上げといたよ。」

おばあの自慢気な声に、フローラはぎこちなく微笑んだ。

「ありがとーばあば、
…しかし、お見合いするだけなのに準備は大変なものね…、」

着慣れないドレスに腰を締め付けるコルセット、息苦しい格好に、これだけでもフローラは滅入りそうだった。

「なーに、こんだけ綺麗になったんだ!見合い相手もいちころだよ。」

「う、ん…、」

…いや、端っから断られる事前提なんですが…、

それでも、ちらりと姿見で今の自分を見てみて、フローラはちょっと満足した感じがあった。

…うん、こうやって見てみると、自分もまんざらではないわね…。

母親譲りの豊かな黒髪、くりっとした黒い瞳、控えめの鼻にこれまた控えめの唇、
体型のほうはそれなりにふくよかな胸にちょっと太めの腰つきと肉付きの良いお尻。

フローラは普段は少し地味な顔立ちなのだが、きちんと化粧をして着飾ると普段が地味な為なのか、それなりに美人に見えるのだ。

「フローラ…、」

そんなフローラのもとに、父親が心配そうに近寄ってきた。

「お父様、どうかしら?なかなかのものでしょう?」

嬉しそうにくるんと一回転するフローラとは対照的に、父親は浮かない表情をしていた。

「うん、立派なレディだな。…儂もついて行きたいところだけど、店番しなくてはいけないからな…。」

「独りで大丈夫よ。どうせ断られるものだから、気楽に行ってくるわ。」

「……。」

心配そうな父ワンダに対して、フローラは呑気なものである。

「嬢ちゃん、馬車が来たよ!」

「あ、はーいっ!じゃあお父様行ってきますね。」

フローラは傍にあった帽子を被って父親の頬に口づけると、さっと身を翻して外へと向かっていった。

「…行ってらっしゃい…。」

…嬉しそうに馬車に向かう娘の後ろ姿を見ながら、ワンダは何とも複雑な気持ちで胸がいっぱいになるのだった。



      *



「………。」

…やっぱ、来なければ良かった…。

それが、カフェ『サンシリア』の前に着いた時のフローラの感想だった。

確かに、ここは王都フェルティで1、2位を争う程の高級カフェとは知っていた。

その名前に相応しく、店前では各人が乗り付けてきたとおぼしき、洗練された(恐らく)血統正しき馬が引く豪華な馬車が並び、店内に入っていく人々…恐らく高級貴族や官僚達…、はこれまた洗練された豪華な衣装に流行の髪型をしていて、そしてさりげなく身に纏うネックレスやブレスレットなどは、恐らくひとつだけでもフローラの店なら軽ーく買えそうな程の豪華で素晴らしい細工のアンティーク…。
そして何よりも、来店する高貴なる御方達の立ち振る舞いの気品に満ちた事…!

「……。」

更新日:2015-07-26 00:56:28

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