官能小説

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商売の世界は商才と人脈、そして運が全てと言っても良い。

フローラも父親の後について様々な商人の会合等に出席しては他の商売人や業者と逢って話をしたり、時には交渉事もやってみたが、皆いまいちの反応だった。

『やっぱ経験が無いから考え方が甘いね。』

『女性には厳しいかな。』

時には差別的な事を言われてショックを受けた事も一度や二度ではない。

…やっぱり、自分が若くて、しかも女である事が甘く見られているのかしらね。

『やっぱり父親が父親だから、娘も期待出来ないな。』

もともと父親のワンダも優しいが大人しく控えめといった、商人としては致命的な性格をしている為か、他の商人達との競争に追いつかず、格下に見られているところもあった。

…自分だけでなくお父様まで格下に見られているなんて…!ああ、悔しいわ!
自分だって今はまだ半人前かもしれないけど、頑張れば上達するのよ!
いつかお父様の跡を継いで、いいえ、お父様を越える商人になって、この店をちゃんと守ってみせるわ!

ぐっと握り拳をつくって決意を新たにすると、フローラの気持ちがぐっと引き締まるのだった。

「よし、頑張るわよっ!」

『ちりりん』

と再び店の扉の音。

「いらっしゃいま…、お帰りなさいお父様。」

フローラは店の扉に現れた父親の姿を見ると、笑みを浮かべて掛けよって出迎えた。

「ただいまフローラ、何か変わった事は無かったかい?」

ほんの少し、疲れたような表情を浮かべてそう聞いてきた。

「さっきルイさんがお父様を尋ねてきたわ。また来ると言って帰られたけど、何か思い当たることでもあるかしら?」

フローラの言葉に、ほんの一瞬びくっとした様子だったが、

「いや、何だろうな?明日ルイ氏の自宅近くまで行く用事があるから、ついでに訪ねてみるよ。」

「そう。」

「ちょっと疲れが出たみたいだ。夕食まで部屋で休ませてもらうよ。」

そう呟いたワンダの表情には疲れと、微かにだが焦燥しているようにも感じられた。

「解ったわ、店番は私がするのでお父様はゆっくり休んでいてね。」

「すまない。」

そう言って、自室に入って籠ってしまった。

「……。」

…確かに最近のお父様はよく外回りをされているわね。それ程忙しいのかしら?
でも、外回りして取引とかが行われている割には、顧客がなかなか増えないわよね。
まあ、顧客なんて直ぐに増えるものでも無いけどね。
…それとも、何か別の用件で出ているのかしら?

そんな父親の様子にフローラの心の中には不安と心配が起こっていた。

…何か、嫌な予感がするのだけど…。

願わくはそれが当たらない事をフローラは祈っていた。



      *



数日後、

「本当に独りで大丈夫かい?」

ワンダの不安そうな表情を見ながら、フローラは目の前に置いてある数々の布地と糸を大切に風呂敷に包んでいった。

「大丈夫よ。あそこは私にとっては庭みたいなものだから。」

「……。」

更新日:2015-08-15 09:52:39

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