官能小説

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フローラは独り街を歩き、国一番の市場であるセンテラル市場をぬけ、更に東へと向かっていった。

彼女が歩くに従って、道に沿って店々が並び、買い物をする人々で溢れ、小綺麗でお洒落で賑やかで明るい街の様相は少しずつ変わっていき、
徐々に人通りは少なくなり、建物も薄汚れて所々で赤や紫の派手な布を垂らしていて、時折目付きの鋭い薄汚れた中年の男や屈強な若い男がうろつき、そして胸元を強調した派手な原色のドレスを着た若い女が建物の前に立っていて、通りを歩いている『ごく普通の男達』に声を掛けていた。

「ちょっとそこの色男、少し遊んでいかない?」

「ねえ、ここで私と一緒に休まない?」

…フローラがいる場所、

そこはかつて彼女が身を隠していた場所。
フェルティ国の『第5の街』の異名を持つ、誘惑と欲望と妖艶に満ちた街、娼婦街。

「ねぇ、そこのねえちゃん、ちょっと良い話があんだけどさぁ…、」

ここで声を掛けられるのは、客引きの為の男だけとは限らない。

フローラのような若い女が独り歩いていたら、ほぼ確実にひとりふたり、薄汚れた中年の男が声を掛けてくる。
彼らは誘人(スカウター)と呼ばれる男で、素人の女(稀に男もあるが)を言葉巧みに娼婦(もしくは男娼)に誘う者達なのだ。

「……。」

そんな男に、フローラは冷やかな視線を向けて、胸にかけた緋色の石が付いたネックレスに手をかけてわざと見せつけた。

「げ、それは!ちっ、取引商人(コネクター)かよ…。」

ネックレスを見た途端、彼女に声をかけていた男は忌々しそうに舌打ちしてそう呟くと、未練がましくぶつぶつ文句を言いながらフローラの前から去っていった。

全く…、いい加減に自分の事を覚えないのかね、馬鹿誘人どもが…。

フローラの持つ緋色の石のネックレス、
それは娼婦街で娼婦以外の商売をする者達、…酒や食料品、布やドレスの売り子、髪結い女やお針子等の取引商人(コネクター)に与えられた、いわば身分証明書の代わりである。

ここ娼婦街では、この石を持つ者に客引きや害を成したり、先程のような誘いをかける事は禁止されており、破った者は街中でうろついている、街の統率者であるマダム=ローゼス直属の屈強な男の集団、守人(ガーディアン)達に捕えられ、厳しい私刑を受ける。

フローラは疲れたようにはあ、と溜め息をついて、さっさと目的地でもある、とある娼館へと向かっていった。

「いらっしゃい、…て、あら、フレイアじゃないの!」

小さなとある娼館、…それはかつてフローラが娼婦として働いていた場所、の前で客引きをしていた女は、フローラの姿を見るなりぱあっ、と笑顔になって彼女に声をかけてきた。

フレイア、

それはこの娼婦街で使っていたフローラの偽名、そしてフローラの娼婦としての名前。

「久しぶりねマイラ。相変わらずセクシーね。」

マイラと呼ばれた女性はフローラと同じ位の年齢で、短めの黒髪に浅黒の肌、可愛らしい顔に少し濃いめの化粧をし、豊かな胸を強調した赤い派手なドレスを纏っていた。

更新日:2015-10-19 22:47:04

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