官能小説

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いち

「貴女、お見合いしてみない?」

「…はい?!」

いきなりの言葉に、フローラは間抜けな声で答えた。



      *



陽の国フェルティ、

海に面する小さなこの国は昔から海洋貿易が盛んで、他国から数々の品々が集い、その品々を商人達が扱うことによって繁栄してきた。

そんな数多いる商人達の中のひとり、布地と糸の問屋を営むエンパルス家も昔から続く商人の一族であった。

エンパルス家は昔から誠心誠意誠実をモットーに、固定客もついていてつつましくもそこそこ上手くやってきていた。

しかし最近は、他の同業者に押され気味になってしまい、馴染みの客も次第に離れていくといった有り様となっていた。

それでも、何とか残り僅かになった常連客を相手に昔からのやり方で、細々と店を営業していた。

「貴女、お見合いしてみない?」

そんな状態の店の番をしていたエンパルス家の当主の次女、フローラのもとにいきなりやってきた見合い話。

「…はい?!」

余りのことに、フローラは思わず間抜けな声で答えてしまった。

「今、なんとおっしゃいましたか?」

まじまじと、今では少なくなった馴染みのお針子さん、小肥りの中年の女性、ミラダ婦人を見ながら再び確認するようにそう尋ねてみた。

「だからお見合いよお見合い。貴女、まだ独身よね?丁度良い話があったから持ってきたのよ。」

ふるふると、かなり肉付きの良い身体を震わせながらその女性は愉しそうに話す。

「はあ、まあ、独身、ですよ、一応…。」

うん、独身です。ですけど、

「うち、商人だけど、金持ちどころか全然赤字スレスレ経営で、持参金なんか出せませんよ。」

「大丈夫、お金には困ってない方だから。」

ふむ、お金目的では無いのね。
商人との結婚は大抵持参金を含めたお金目的が大半なのにね。

「ですけど、私、もう22歳になりますけど、」

「大丈夫大丈夫、22歳なんて、まだまだ若いじゃない〜。」

むむ、女性の結婚適齢期の20歳を過ぎても良いとは…、まあ、確かに22はまだまだ若い、かな…?

「それに、出戻りではないですけど、一度婚約してたのを見事に破棄されましたし…、」

ああ、これ、私の黒歴史のナンバー2なんだけどなあ、

「大丈夫よぉ〜。」

「それに、もう、…生娘でも無いですし…、」

よし、最後のとどめ!恥はかき捨てて…、

流石に内容が内容なのでちょっと声のトーンを落として呟いたのだが、

「あらぁ〜、今時花嫁に生娘を求めるなんて古いわよ、それにそんなの気にする方ではないから安心して〜。」

と、大きな声で返事されてしまった。

「……。」

撃沈。

これだけの欠点を並べられても退かないとは、よっぽど相手は低レベルな奴だな、きっと。

まあ、こんな自分にはそれくらいの相手が相応しいかもしれないけど、だけど…、

「折角ですけど、私、結婚する気は全く無いので…、」

「それでね、相手というのが、」

丁寧にお断りをいれるフローラを完全に無視して、婦人は尚も熱弁していく。

「私の顧客のひとりなんだけど…、」

「?!」

そこまで聞いてフローラは表情を強ばらせた。

更新日:2015-07-14 12:40:00

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