官能小説

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若葉の頃

年が暮れ、そして年が明け…3月。
俺が高校に入学してから、間もなく1年が経とうとしていた。

「カッつん。今日、遊びに行っていいか?」
クラスメイトの声。
学校に馴染み、友達も増えた俺は、いつしか、あだ名で呼ばれるようになっていた。
俺の部屋にも友人たちがよく出入りするようになり、その騒がしさを時には疎ましく思うこともあったが、そんなことも楽しく思える心の余裕が、4月に比べると生まれていた。

ムッさんも、柔道部の稽古のため、平日は試験前でもない限り滅多に顔を出さなかったが、部活のない週末などは、友人たちと連れ立って、よく俺の部屋に遊びに来た。

ただでさえガッチリしたムッさんの体は、連日の稽古で鍛えられ、更に大きくなっていた。
体格だけではない。去年の4月はお互い中学を出たばかりで、あどけなさも残るような顔立ちだったように思うが…ムッさんは何だか急に大人びたように見えた。
髭も濃くなり、坊主頭のせいもあり、友人たちに“オッさん”などとからかわれると、戯けたように怒って見せたりしていた。

狭い俺の部屋で、4〜5人の友人たちがガヤガヤとダベったり、持ち込んだ雑誌を回し読みしたり…好き勝手に過ごしている。
壁に背中を預けて膝を抱えて座り、そんな仲間たちを眺めていると、ムッさんがやってきて、のっそりと俺の隣に腰を下ろした。

「…カッつん。今度の日曜、ヒマか?」
低く、ボソッとした話し声。
ムッさんの顔は、何だか少し赤い。

「え…?いや…バイトは夕方からで…それまでならヒマだけど…何?」
「いや…見たい映画があるんだけど、一緒にどうかなと思って…」

なぜだか少しドキリとする。
「ふたりで?ほかに誰か行くの?」
「いや…派手なアクション映画とかなら、誘えばコイツらも行くんだろうけど…見に行きたいの、そういう感じじゃなくてさ…」
「ふーん…」
色々と生活が忙しくて、映画を楽しんだりする余裕も趣味もなかった俺には、よく分からない。

でも…ムッさんとふたりで休日に出かけるのも悪くないと思った。
「うん、いいよ。」
俺がそう答えると、ムッさんの顔がパアッと明るくなった。
「よし、じゃあ10時に迎えに来るからさ。よろしくな。」
赤い顔で嬉しそうに笑うムッさんを見て、俺の胸は確かにドキリとしていた…。

………

映画は文芸作品というのかヒューマンドラマというのか、淡々と静かに物語が進み…退屈な話なのかなと思いつつ、いつの間にか俺は引き込まれていた。
登場人物が皆、孤独で寂しげで…その群像劇というのか、ささやかな心の触れ合いが、何だか胸に染みた。
最後には自分でも思いがけず感動し、うっすらと涙まで出てきたのが驚きだった。

「カッつん。映画、どうだった?」
映画館近くのファストフード店で昼飯を食べながら、ムッさんが聞いてきた。
「うん…良かったよ。いい映画だった。」
コーラを飲みながら答える俺。
「なら良かった。」
にっこりと嬉しそうに笑って、ムッさんがバーガーにかぶり付く。

「俺、1回見てさ。すげー良かったからカッつんにも見せたかったんだ。」
口をモグモグさせながら言うムッさん。
「え…、同じ映画、また見たの?」
驚く俺に、照れたようにムッさんが笑う。
「気に入った映画は何回か繰り返し見たりするからさ。別にいいよ。」
「…好きなんだね、映画…」
ムッさんは俺の言葉に照れくさそうに笑って頷き、2個目のバーガーの包みを開けた。

夏以降、話すようになってから思っていたけれど、ムッさんは物知りで多趣味で…口数は多い方ではないけれど、話題が豊富な男だった。
「見かけによらずブンガク青年だよなあ、ムッさんは。」
「…失礼なこと言うなよ、脳味噌まで筋肉なんて言われたくないからな。文武両道を目指してるんだよ、俺は。」
俺の部屋で友人たちにからかわれると、そう言って笑ったりしていた。

その日は、ふたりで色々な話をしながら、街をぶらついた。
個別の友人とふたりだけで遊ぶなど、俺にとって初めてのことだった。
楽しかった。
ムッさんとは、より親しくなれそうな気がした。
いや、親しくなりたいと思った。

そして…
今まで幾度となく感じてきた、ムッさんと体が触れ合ったり、その体や笑顔を目にした時の胸の高鳴りを思い出し…
心の中で少なからず動揺し、頭を振った。

俺は…何を考えている…
大好きな先生が…
あんなに俺のことを思ってくれる先生が、俺にはいるというのに…

俺を見てニコニコ笑っているムッさん。
ぎこちなさがバレぬよう、俺は何とか笑みを返した。

更新日:2015-10-01 21:32:11

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