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plus E

いつからだろう。彼の側に行くと、心臓が無駄にドキドキとして、落ち着かなくなる。いつもより、変なことをしてしまうし、ただでさえ情けないリーダーと思われているからもしれないのに、さらに変なやつだと思われているんだと考えると、いたたまれない。
それでも、側にいたい、なんて思ってしまう自分は、きっと病気なのだ。

ウングァンがもんもんと考えていると、隣でぷっと吹き出す笑いが聞こえた。

俯いていた顔を上げると、まさに考え込んでいた相手が自分の方を見て笑っていた。訝しみながらも、その笑顔に見惚れていると、「変な顔してた」と言われてしまう。

「え? 変な顔? してた?」

「してました」

おかしいな。自覚がない。表情管理もできないなんて、芸能人としてあるまじきことだ。最も、自分が芸能人と呼ばれることに、未だに違和感が拭えない。

「何を考えこんでいるのか知りませんけど、ほら、行こ^^」

またしても、もんもんとしていると、笑顔で手が差し伸べられた。

ここは空港。到着ゲートの向こう側には、きっとファンの子たちが出迎えてくれている。はずだ。

いつからだろう。
同じチームに昔から一緒にいて、手を繋ぐのも側にいるのも、以前は何とも思わなかったのに。だんだんと一緒に過ごす時間が多くなるにつれ、彼に対する感情も変化していった。

どうしてだろう。
彼だけが特別な存在になっていく。必然のような、偶然のような。
ふとした瞬間に、気づいてしまう。
例えば、肩が触れ合ったり、俯いた横顔を見たり、素っ気なくされても、イタズラをされても、歌声を聞くだけで、笑顔を見るだけで、好きなんだと気づく。

今も、差し伸べられた手に心が踊る。

不自然にならないように気をつけながら、その手を取る。温もりが嬉しい。一緒に隣を歩けることが、とても嬉しい。



今はまだ、このままの距離で構わない。

いつか、もっと、近づける日まで。


更新日:2015-06-04 21:48:25

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