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8 晴天の日

その宿では、
朝食は出なかった。
安い宿事情には、そのあたりもあった。

僕らは早々にチェックアウトして、
また車にのった。

町育ちの僕らの頭の中には
昨日あれだけイタイ目にあっても
「コンビニでもよればいい」
という認識が
まだやっぱりうっすらあった。

ラジオをつけると、
やけに爽やかな曲が流れていた。

その日オホーツクは晴天だった。

帰るにしても、
もうこんなところまで来てしまったら、
帰り着くまでには
ある程度の時間はかかる。

道がすいてて、
迷わずに帰れて、
どこにもよらなければ…

僕のとばし癖がいいほうに生きれば、
今日の夕方には札幌につく…かもしれなかった。

シナノに
それを言うと、

「…急げとは言ってない。

…べつに、
もう一泊くらいしても…
いい…けど。

金がないってほどでもないし…
せっかく…来たし。」

という
またなんだか昨日とは
違う返事が返ってきた。

「…丹頂鶴かマリモでも見る?
…ラムサール条約の湿原とか。」

…シナノは同意し、
地図を確認してから
カーナビに目的地をうちこんだ。

更新日:2009-02-25 21:25:00

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