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プロローグ

こんな日がくるなんて、思ってもいなかった----。

耳元で、まおの熱っぽくかすれた声がする。
ぎゅ。と首筋に押し付けられた唇は、火傷をしそうに熱い。

これが、まおの秘めに秘めて爆発しそうに積もった思い、だと言うのか。

戸惑いと、驚き。

だが、それ以上に抱き締められる腕の力強さに、胸が甘く締め付けられる。

「ずっと、ずっと見守っているよ。」

やわらかな春の日差しの中。
タンポポ越しに交わした誓い。

いつまでも守るべき存在だと思っていたのに。



否。



成長とともに、まおの瞳がきらきらと強い意思を放ち。
つるんとした幼い掌が、ゴツゴツと骨ばって力強くなるのを目の当たりにして。


・・・きっと、どこかで。


この腕にサラワレタイ。


と、願っていた。




更新日:2015-05-12 16:16:28

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