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例え愚者の為でも

 さて、ここ『青竜』で僕は観察させて貰うよ。一応、コイルでは不安なのでオームも送り出す事で『玄武』に存在する勢力を少し足して貰った。さてさて、時間稼ぎには十分だろう。と僕が考えてる時にロディが無礼にもここへ立ち入る。

「殿下は何処に居らす?」

「残念だけどここには居ないよ、ロディ」

「嘘を吐くな」見なくても構えてるのがわかる。「何ならその命を散らしてでも……」

「オイオイ、ここはミゲル様の区画だぞ!」そこへ調子良くボルタが来た。「例え『八卦』でも怪我は避けられない!」

「雑魚が……良い気に成りおって!」

「言っておくが俺は雑魚じゃねえ! このように」空間転移で手元にやって来たオメガエーテルキャノンをロディに向けるボルタ。「チャージ完了済みの主砲を何時だって発射出来るぜ」

「撃つなら」突然、重力を通常の百倍にしたロディ。「それ相応に対処するのみ!」

「くう、だから相手にしたくねえんだよ!」膝を曲げて更には足元にエーテルキャノンを落とすボルタ。「仕方ない。遠隔操作武器を使いたくは……」

「止めて貰おうか、ロディのお嬢さん」有難う、『シャンティ』……「『月の四様』とは全面戦争したくないし、流石に愛しの殿下の許可なしに彼女達をここに来させる訳にもゆかないだろう?」龍道を籠めた三角定規を首に付き付けるか。

「アンペールか……確かに一理ある」『リバースムーン』を解除して槍を納める。「大人げなかった」

「僕も同じ意見だ。『月の四様』相手に苦戦はしないと思うけど君も含めて全員で掛かられるとそれは計画を支障に来たす事態へと陥りかねない」

「それは殿下のお望みに反する……それで結局殿下はここに居ないのだな?」

「居たらとっくの昔にミゲル様が仰っていた!」

「まあバルカ殿下は何時も何処で何をやってるかわからない。それに属性上はロディのお嬢さんが居場所を突き止めてるはずなのにわからないと成ればお手上げだ」

 さて、何処に居るのか? 答えは恐らく過去に跳んだんだろうと推測。それでどこに跳んだかまでは流石に計算出来ない。何せタイムワープの基本的な法則は永遠回帰で常に過去、現在、未来そして過去という順序で飛ばないと効率が悪い。よってバルカは先に未来へ跳んだ後、過去に跳んでる模様。じゃあどのくらい未来かと尋ねられると……正直次の展開は読める事に成る。

 けれども今の段階で未来は常に書き換えられてる事が僕の算出したカオス理論で明らかと成った……という事は一体バルカは何時頃の未来に跳ぶのか? それがわかれば後はどの辺りの過去に跳んで大体何時頃の現在に戻るかが計算出来るのだがな……まあ今はペルセフォネが僕の計画を推し進める事に期待して兵を少々送ってみたよ。

「ところで聞きたいんだが、ミゲル様」

「何だい、シャンティ?」

「ダイオードとトランジスタを見かけないのだが」

「ちょうどファーストボーンとプールの狭間にある名も無き島に向かってる」

「まさか追撃するのか、トランゼ・ウィルツェンの依頼に従って」

「いいや、追撃するのはアンノウン……トランゼも彼女の存在が邪魔だと判断したみたいだよ」

 さてさて、危険年齢の子供が健やかに暮らせるが時空振動による災害に苦しむ島でどんなアトラクションが待ち受けるか……楽しみだね。

更新日:2015-07-21 08:12:42

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