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新庄靖幸
白道マサシ
水田朋子
山口静子

ホワイトボードに書き出された名前を見て、富永警部は頭をかいた。日本全国で最近多発している失踪事件の新たな名簿である。

行方不明、失踪自体はそこまで珍しいわけでもない。しかし、今回の失踪は、少し違う。まるで、煙のように、いなくなるのだ。
新庄靖幸は、夜の海で通勤時にいつも持っていたカバンだけを残して、そこから姿を現さなくなった。
白道マサシは、学校で同級生たちとふざけて遊んでいたところ、グラウンドに走り出し、そのままいなくなった。
山口静子は都内のカウンセリングルームで心理カウンセラーをしており、その仕事の真っ只中、最後となったクライエントの水田朋子とともに姿を消した。
富永警部は、禿げかけたその頭をかきむしり、タバコに火をつけた。その時、ドアをノックする音が聞こえた。
ドアをノックするその音で、富永警部には、それが誰だかわかった。
「は、はい!どうぞ!」
「富永さん、で、君の考えはどうなんだい?」
男は部屋に入るや否や、いきなり要件を切り出した。
「そ、それが、全く、手がつけられない状態で。みんな、煙のように消えてるんです。物理的に不可能と思われるケースもたくさんあります。白道マサシのケースでは、高校生が同級生たちが見ている間に、そのまま姿を消しています。
海辺で姿を消した、新庄靖幸は、実はカツラをかぶっておりまして、そのカツラを海の前でとって、叫んでいたそうです。」
「目撃者はいるのかい?」
「ええ、カップルで夜の海で、よろしくやろうとしてたんでしょうね。現場は人の出入りがないところですから。そのカップルの2人の証言によると、男は、この姿は俺と海との秘密だ、とかなんとか叫んでいたそうです。」
「なるほど。僕の確認したとおりだ。カウンセリングルームでの2人の失踪についてはどう思う?」
「受付の長谷川典子の話によると、次のクライエントを診断する時刻ぐらいに、罵り合う声とドタンバタンとものすごい音がしたので、慌てて部屋に入ったそうです。」
「ふむふむ。で?」
「そ、それが、ドアを開けると、そ、その、誰もいなかったということです。その時、部屋の中の様子が少し色合いが違うように感じたということを長谷川典子は証言しております。赤く感じたとかなんとか。」
「そのカウンセリングしていた部屋に、人が隠れられるような場所は?あるいは、そのドア以外の出口は?」
「それが、ないんです。人が隠れられるようなスペースはありません。ドア以外の出口と言いますか、窓が外には通じていますが、ビルの6階にありますので、そこから、出ることは、生きたままじゃすまないってことを意味しますよ。へへ。ですので、誰にも気づかれずに、2人とも姿を消すというのは、物理的に不可能です。」
「僕の確認したところによると、どのケースも、不思議な赤い光を見たという証言があるね。君はその件についてどう思う?」
「はあ、一応、洗ってはみたのですが、現場にそのような赤い光を発生させるような機械は見当たらず、今のところ、事件とのつながりもわかっておりません。写呂久さん、あなたのお考えは?」

更新日:2015-05-04 13:19:55

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ベロにちょっとだけあててからかける男