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今日もガーネット軍団の朝礼が始まる。
「ひとーつ!前歯一本、抜けてるくせにずっと歯を入れないまま何年も過ごす奴ーっ!」
「変な奴ーっ!」
「ひとーつ!変な奴は!ひょんなことで!」
「パトカーに乗れたりするーっ!」
「ひとーつ!自分の彼氏のこと、相方って言う女ーっ!」
「変な奴ーっ!」


号令が終わり次第、ボスは切り出した。


「最近、アジトにゴミが落ちてる。これ、なんで?」
みんな、気まずそうにしている。
「その前に、なんで、俺がこの組織の中で、唯一、掃除の担当だけは決めてないのか、わかるか?他の分野は仕事として、分担したほうがええから、分担して全体的に機能するようにしてるねん。それは、仕事やからや。わかるな?でも、掃除ってのはな、気持ちの問題やねん。掃除せえへんからって、特別に業務に支障あるか?ないやろ?」
ボスは続けた。
「ええか?それでも、掃除ってのは、大切やねん。業務に支障ないからこそ、気持ちの乱れが、アジトの汚れになってるから、問題やねん。違うか?掃除に関してだけは、分担決めたくないねん。なぜなら、そういうとこ、俺は見てるしな。気がついた時に掃除してくれてる軍団員もいる。それも知ってる。それを、俺は、別に褒めたり、ここで名前言ったりもせえへん。褒められるから、やるとか、そういう次元の話ちゃうからや。」
軍団員たちは、姿勢を正して、聞き入っていた。
「アジトの汚れは心の汚れ。心が汚れてる奴に、世界征服なんか!できるかーっ!ボケーっ!」
ボスの怒号が響いた。軍団員たちはピリピリとした雰囲気に包みこまれた。
後ろのほうで、まだ歳のころ、15歳ぐらいの中学生軍団員の2人が耳のピアスを触りながら、「だるいわぁ、あいつ。マジであいつ、赤い光出して、しばこうぜ。絶対ケンカ弱いしな。」と小声でささやきあっている。

と、その時、ボスは、愛くるしいまんまるなおめめを糸みたいに細くしながらこう言った。


「きつく言って、ごめんなちゃい!」


軍団員たちは、みんな、うっとりして、ダラダラとヨダレをたらした。血気盛んな中学生軍団員たちは、初めて愛されたような不思議な感覚を覚えた。初めて来るのに懐かしい、なんて言葉があるが、親よりも親っぽいと感じることができた。

「俺は、これから、変なタイミングで!突然、アジト内の便器を舐めることにした!今、決めた!お前たちの便なら汚くない!汚れてても舐めるし、汚れてなくても舐める!変な時間に目覚ましをセットして起きて、突然舐める!だから、掃除せえよ、とか、そういうことじゃない!俺はこのアジトが大好きやからや!だから、このアジトの便器も大好きや!だから、舐める!それだけ!この件に関しては以上!」

軍団員たちは、全員、ボスの愛を感じ、これからは、掃除をしようと思った。

「もうひとつ!大事な話がある。掃除の件も大切やけど、これは、もっと重要や。ガーネット軍団の中に、赤い光で、周囲の感覚を麻痺状態にさせてから、ついでに、そこらへんの女にディープキスする奴がおるらしい!!何を考えとんのじゃ!一体!!我々、ガーネット軍団は、より美しい世界を実現するための軍団やろ!そんなことしたら、ただのハレンチ軍団やないかーっ!!」

言うや否や、ボスはトイレにかけこみ、便器をペロペロと舐めはじめた。宣言通り、変なタイミングで便器を舐めているのだ。


心配して、ボスを追いかける軍団員たち。
軍団員たちは、こんなに優しくて愛のあるボスにそんなことをさせているという罪悪感で、みんな、心がひとつになった。


ボスは、自分の舌に、軍団員たち全員の視線が集まるのを感じた。軍団員たちは、ボスの舌を、世界で一番美しい舌だと思い、うっとりしたのであった。

更新日:2015-05-11 08:06:21

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ベロにちょっとだけあててからかける男