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第3章 琢磨

最近転勤の辞令が下った。

のり子との危うい関係もこれで清算できるはずだ。

いや、きっちりと関係を切らなければ・・・。

大事に、お互いが一線を踏み外す前に、何とか踏みとどまらなければ。


実際には、上手くいっていない妻との生活が重くのしかかっている。

いつも気が晴れない。

その空気を変えてくれるのが、のり子だ。


しかし、のり子はのり子の家庭があり、自分たちの立場もある。

これ以上深入りしてはいけない。。。。。

自分に言い聞かせる。


妻とはもう何年も関係を持っていない。

きっかけは自分にあることは重々わかっている。

全ては自分のせい、酒の失敗からきている。

飲み始めると、どこまでも飲まずにいられない。

自分で自分を制止できない。

それがもとで、栄子にはずいぶん、数え切れないほど迷惑をかけてきた。

悪いのは自分だということはわかっている。

でも、栄子に責め立てられると素直に謝ることも、自分を正すこともできなくなる。

栄子は断酒会に行こうという。

でもとんでもない、そんなことをする勇気はないし、酒を断つ気もない。

飲み過ぎが悪いだけだ。


そんな険悪な夫婦生活から逃避できるのは、のり子といる時、話している時だ。

のり子も夫婦関係に悩んでいるようだ。

お互い、愚痴を言いあっているうちに、栄子とは築けないような関係が、のり子となら築けるような、そんな妄想をいだく時がある。

危険だ。

何とか距離を置いて、この思いを断ち切らなければ。


自分の気持ちの変化に何か気づいたのか、最近栄子の態度が前にもましてよそよそしく、目も合わせようとしない。

まだあの時のことにこだわっているのだろうか。

何年たっても、素直に謝ることができない自分がいる。

一言、「あの時は、すまなかった」と素直に言えば昔のように戻れるのだろうか?

その勇気が出ない、素直になれない。









更新日:2015-11-19 18:48:03

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不倫の代償~吉澤典子の罪と悪~