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第七章、二つの怪死=其の四、生き返った役人



 一年が過ぎ、次の春先、あれほど白い獣狩りに、頻繁に狩り出されていた大虫・小虫村の狩人達も、以前のように、不明な白い獣狩りには程々手を焼いていた

 それだけに、鳥やウサギの小動物から、鹿、猪等と以前の狩猟に戻った事で、本来の本領を発揮して、村の祭り事で賑わう様になった。

 康福自身も、以前のようにカリカリした白い獣狩りより、本来の気楽な狩猟を楽しむ方が。良く合っていた。


 そんな狩りの最終日、夜半を迎えた頃。

 お供に参列していた須柄富左エ門以下、お役目役の一人、堀俊一郎は、小虫の伝右衛門達と先陣に走り、鹿の包囲に廻っていた。

 鹿を射る康福より、一足先に包囲を勤めるのが伝右衛門達の役目で、堀俊一郎も彼らと共に先回りして、包囲に努めていた。

 林の中で、俊一郎は陽の傾いた中で、キラキラヲと輝く太陽が、異様にまぶしく見え、目を奪われていると、視界が一気に林の中から青空の視線にと目が移った。

 すると急に馬が立ち上がり、急停止した場所は、高い崖の上で木々が無くなって、その先には、太陽の日差しではなく、当たりにキラキラと星のような光りが輝き、スーッとそのまま崖下の谷底へと吸い込まれていった。

 馬の急停止にバランスを失った俊一郎は、そのまま一気に、馬と共に崖から谷底へと転落くしていた。

 馬の悲鳴に気付いた伝右衛門達は、異変を感じて、直ぐ様、悲鳴のした場所へと急いだ。 高い崖の上には、もう俊一郎の姿はなく、三十㍍の遙か下の方へと、遂落して居る事が判った。

 下には、一本の川が見え、周囲は深い森に包まれた場所だった。

=川に落ちた。若しや助かるかも知れん=

 一名を後方の康福の元へ、事故の知らせに走らせ、残りの五名で、伝右衛門は崖の下り口を探し回った。

 だが、中々その下る場所が見当たらなかった。




更新日:2018-04-07 21:52:14

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