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プロローグ

灰色の雲が、空を鉛色に染めた。
天気予報では、今日が満月の見頃な時らしい。けれど、雲がそれを隠してしまった。
橋の下。一番人目につかないここは、依頼をするにはもってこいの場所だ。

「なんで・・・・・」

足元に転がる族______所謂不良の一人が呻いた。
今回の依頼は俺の昔馴染みで、この不良たちの総長からだった。

「足を洗うからチームを解散させてほしい」ということらしい。
どうせなら自分で言えばいいだろうと言ったらそいつは苦笑した。

「オレの所為であいつらが入ることになったし、それに関しては悪いと思ってる。けど、他のチームのスパイがいたみたいでな。そいつが、あいつらに指示をしてるからいくら俺が言ったって、誰も聞かないんだよ」

そう言うと、そいつは悲しそうに笑った。

「だから、お前に頼むのが一番いいんだよ。頼んだぜ、”片付け屋”?」
「依頼料はいつもよりも多いぞ」
「ああ。いつもの口座に振り込んどく」
「あと、伝言を頼んでいいか?」
「ああ」



「元、あんたたちの総長さんから伝言だよ。
______”今まで、オレなんかについてきてくれてありがとな”ってよ」
それだけ言ってその場から立ち去る。もうここにいる意味もない。


いつの間にか雲は割れ、その割れ目から満月が顔を覗かせた。
生暖かい風が頬を撫でる。それがひどく気持ち悪い。
風によって、パーカーのフードが捲れた。

「終わったのか氷空(ソラ)」
「ああ。零(レイ)」
俺の同業者、所謂相棒である零が背後にいた。零は嫌そうに顔をしかめている。どうやら俺と同じで、この風が嫌いらしい。
「この風は嫌いだ。あの時のことを思い出す」
零は満月を見ながら言った。
「俺も。だから早く帰ろう」
「ああ」

俺と零は橋の下からゆっくり出ていく。

満月は、そんな俺たちの姿を静かに見ていた。

その姿は10年前のそれにひどく似ていた。



               
  















更新日:2015-12-27 23:01:10

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